9つの立国構想

CMF対談


   夢対談 時代の曲がり角


リーダー教育こそ国づくりには必要
ペマ・ギャルポ

基本は教育だと思っています。教育は即結果がでるものではありませんから長期的な計画を持って実行する事が大切です。


例えば今の子供教育は、就職の為にとにかく良い学校に入れ、普通の小中高ではダメという考え方です。本来は普通校で勉強し、子供も余裕を持って上に行けば、進学塾も必要ないのです。


また小中学校の先生は、知識を教える事は出来ますが、人格教育が出来ません。だからそこからやらなければならないことは、とても悲しいことです。


夢対談 時代の曲がり角

私は、教育には家庭と社会と地域(学校を含む)と政府の4つの柱があり、これが一緒になることが大切だと。例えば、学校で教えても、家で親が反対のことをしたら子供は迷いますから。


安倍政権では教育関係の法律がいくつか整備され、文教関係の委員をされてきた下村大臣が頑張っておられますから、多いに期待できると思います。


木原

私も教育は最重要優先項目と考えています。昨年、下村大臣には30分ほどで充実した対談をさせて頂きましが、今後のご活躍を期待しております。


財団の人づくりは「総合人間教育」を基礎に置き、子供の教育は、子供・親・教師(学校)の三位一体を提唱し、この環境を作るためには、産官学の連携も必要だとしています。


総合人間教育は、哲学/科学/倫理・道徳/平和/文化/芸術/生命/宗教という8つの価値を内包していることが、大きな特徴の一つです。


ペマ・ギャルポ

80年代までは、東大を始め大学にはインド哲学や仏教学があり、逆にマルクス研究もあるという精神性がありました。今は、そういうものはお金にならないので、機械的に人間をどう扱うか、機械をどう扱うかという学部がどんどん増えています。


しかし、これからの国づくりを考えた時に、むしろ哲学や宗教学も含めて、バランスが必要です。科学も技術も大いに必要ですが、その科学・技術を使う人間が何を考え、何を目指して何のためにやるかと判断するのは、やはり哲学や宗教学などの文化が必要です。


その意味において理事長の推進されている国づくり人づくり運動は非常に大切だと思っています。


木原

ありがとうございます。


夢対談 時代の曲がり角

今は社会の仕組みも教育も欧米化して、考え方も弱肉強食の支配型が中心ですから、その歪みが出ています。


武士道という日本精神も、遡ってみると縄文時代から育まれたものでありその日本文明・文化の根源は「多様性を融和する力=むすひ」です。


日本の政治はもちろん、経済も産業も教育も家庭の環境も、そして国際社会においても、共生型の日本文明・文化を礎にした和流でなければ生き残れないという確信があります。


だからこそ昔の私塾のような場として、人間教育を財団で行ってきました。最近はそういう場も多いようですが、見せかけのテクニックだけを教えている風潮があるようですね。


ペマ・ギャルポ

そうなんです。しかし、これからは特に日本のリーダー教育は必要です。同時に世界の中の日本を考えた時に、特にアジアの将来のリーダーになる方々を、出来れば日本が国家の長期的展望をもって、選抜・教育・アフターケアまで、きちんと考えて行う必要があると思っています。


また、国がどれだけ教育予算を出し時間を費やすかにかかっていますが、今は環境問題の予算の方が多い。私が来日した頃は、福祉と教育でしたよ。


木原

経済だけでは国は成り立ちませんが、経済を立て直すためにもリーダーの意識変革と人財の育成は重要と考えています。


ペマ・ギャルポ

私は今、月に1回20~40代までの青年25名に限定して、太志塾を行って6年目になります。この世代の教育が急務だと思っているからです。明治維新も、原動力の中核となったのは20代の20~30名でしたから。


彼らには、将来どんな職業についてもかまわないが、自分がきちんとした公の利益のために働くというモチベーションと、純粋な動機を持つこと。また、お互いにチームワークを組んで、助け合って欲しいと言っています。


将来的には退職後に、都内の一軒家に住み、自然に触れながら少しの野菜を作り、それを囲んで彼らと議論をし喧嘩もする。そういう事をしていきたいと思っています。


木原

吉田松陰の松下村塾のようですね。先生もそういう具体的な行動を起こしておられるお一人として、財団も応援させていただきますし、また、今後もぜひ国づくり人づくり財団にもお力添えをいただきたいと思います。


今後ともよろしくお願いいたします。



桐蔭横浜大学大学院 教授/ブータン王国首相顧問 ペマ・ギャルポ