9つの立国構想

CMF対談


   夢対談 時代の曲がり角


日本の潜在能力
木原

先生はブータンの政府の首相顧問をなさっておられますが、私はブータンのお国の中には、日本の古き良きものが沢山残っており、それが今日本から消えつつあると思っています。


表面では平和に見えても、根腐れしている状況にあると。東日本大震災の時には、日本全体でまとまろうという機運がありましたが、僅か2年半でそれも消えつつあります。


私はもう30年もしたら、日本の国体はなくなるのではと危惧している一人ですが、ペマ先生から見て、日本の縄文時代から作られてきた潜在能力には、本来の日本を取り戻す国民のエネルギーがあると思われますか?


ペマ・ギャルポ
夢対談 時代の曲がり角

日本には、究極的にはもう1度再生する力が潜在的にあると思います。


皇室だけを見ても2千年以上の歴史を持ってる国は、他にはありません。また、私も色々な危機をいくつも乗り越えてきた日本に触れてきました。


しかし、今ちょっと足りないのは意識ではないでしょうか。


木原

財団の活動は、日本文明・文化への回帰と再生を目指しており、その3つの軸の一つが意識変革なのですが、それがなかなか大変です。


震災のような時に、略奪もなく秩序を持って行動できる。そういう国民性や潜在能力を私も信じています。


しかし、放射能に汚染されてなくても瓦礫処理を国民全体で分かち合って…ということにならなかったことを見ても、民族意識は壊れていると。


ペマ・ギャルポ

私が来日した頃の、日本人の強さ素晴らしさは公共心でした。物事を考える時も、自分が中心ではなく、周囲との係わりの上で考えた。みんなが幸せでなければ、私たちは幸せではないと。だから震災の時も、助け合う潜在力がある。


夢対談 時代の曲がり角

アメリカは銃社会で銃を放棄しませんが、それは個人の命は個人が、家族は家族が、国家は国民が守るという考え方で、その中に個の存在があります。


日本は70年代から意図的に個人主義を徹底して社会に入れ込みましたが、公共心の文化に個を入れ込んだため、ある意味で、個と公の部分の使い分けを公私混同しているように思います。


例えば民営化ですが、「民営」と言う言葉は、国民のものになるという響きがありますが、それは逆で、国有の時は国民全体の利益のためにその会社が存在しますが、民営化によって、国民のものが一部の個人のものになる、極端に言うと合法的に私有化にということです。


木原

私は日本の社会の仕組みは、世界に誇れるものであったと思っています。一億総中流社会は、努力が報われる社会でもありました。日本型経営の象徴と言える年功序列・終身雇用も将来設計が確実にできる仕組みでした。


郵政も国鉄も電信電話会社も、みんなが平等に恩恵を得ることができた。


しかし戦後、定期的な海外からの要求によって、伝統や仕組みが意図的に壊され、その利権は一部の人だけのものか、多くが海外に流出していると。


現代人は、実力主義・能力主義によって心も身体もボロボロです。こんな矛盾した社会が本当に良いと思っているとは思えません。



桐蔭横浜大学大学院 教授/ブータン王国首相顧問 ペマ・ギャルポ