9つの立国構想

CMF対談


   夢対談 時代の曲がり角


日本は人を包み込む女性(母)文化
加瀬

日本は歴史を振り返っても大虐殺をしていません。武士同士の殺し合いも、住民を巻き込まない。日本では農民や近所の住民が弁当を持って合戦を見物に行ったものです。城主一人が腹を切れば、あとの全員を許してくれたのです。キリスト教の踏み絵でも踏んだ人は、後はおとがめなしでした。


中国では相手を攻める時は南京城のように、都市を壁で囲われていてその中の人を全滅させます。古典の中の有名な話では、「包囲されて食料がなくなるとまず馬を殺す。馬を殺すと戦えなくなる。それでも食物がなくなると、子供を殺す。子供はまた作ることができる。」悲惨を極めます。


夢対談 時代の曲がり角

アメリカはベトナム戦争に300万人の兵士を派遣しましたが、戦後アメラジアンという混血児を30万人残しました。この酷い状況に一九八二年にアメリカ連邦議会が救済法を立法し、入国ビザを出しました。このとき韓国も30万人が参戦し、ライダイハンという3万人の混血が生まれました。


他方、日本はシナ事変から大戦に敗れるまで、兵士が残した混血児はほとんどいません。日本は自ら志願した慰安婦を戦場に伴い、兵士の給料より収入がはるかに高かったのでした。


木原

日本には過去、身分制度はありましたが、奴隷を持ったことのない、世界でも極めて珍しい国ですね。


加瀬

そうです。最近になって、慰安婦の問題で性奴隷という言葉がありますが、日本には奴隷がいませんから、そんなことができるはずがないのです。


世界の宗教と神話の研究をすると、世界の主要宗教の最高神はみな男神で独裁者ですが、日本だけが女神で独裁者ではありません。


男親は、出来る子と出来ない子を区別しますが、母親は出来る子も出来ない子も区別せずに包み込みます。日本では祖国を指して「母国」と言いますが、フランス語や英語・ドイツ語では「父の国」といいます。


日本は人を暖かく包み込む女性(母)文化で、母性愛による家族が基本です。夫婦で「めおと」と読みますが、江戸の中期に男が一番偉いとなって逆転したもので、元は女男と書きました。


木原

縄文時代を調べてみると、女性の衣類や装飾品はみんなで差がなく、着飾り整えられています。女性が大切にされる社会であり、争いのない平和な社会を1万年も続けていたという、驚くべき伝統・遺伝子があります。


日本は本当に「女ならでは夜の明けぬ国」だと実感しています。神話の天照大神も、卑弥呼も女性です。


加瀬

幕末から明治にかけて、近代日本を作った男達の英雄が数多くいますが、育てたのは母親です。


夢対談 時代の曲がり角

武士の子は男子だけが藩校に行き、娘は学校には行きませんでしたから、母親の躾が代々引き継がれて、偉大な男達を育てたのです。


江戸時代に寺子屋は全国に約2万ありましたが、幕府や各藩には教育担当の役人がいませんでした。


すべて地域が手作りで教育をしていたのです。




木原

寺子屋は私塾で、徳川の世に平和で仕事がなくなった武士や僧侶が、ほぼ無料で行っていたそうですね。藩校の教育も世界最高レベルだったと。


加瀬

教育より「教養」が大事です。明治を造った男達を育てた女性は、教育は受けてなくても教養がありました。現代は教育を受けた人ばかりで、教養が欠けている。つまり躾が欠けているのです。躾は日本で造った独特な漢字です。


木原

私は、特に日本人の霊性の低下と家庭の崩壊は、危機的状況にあると捉えています。


日本文明・文化を研究していますと、すべて日本が良く、欧米が悪いということではないのですが、欧米文明は、どこまでも争いによって勝者と敗者が明確に決まる支配型であり、日本は古い良いものに、さらに新しい良いものを重ね合わせて共生する十二単衣型で、日本文明こそ持続可能な知恵・精神があると確信しています。


経営の神様と言われた松下幸之助さん、加瀬先生も、精神性と経済の統合を言われていますが、最近の日本、特に経済界は欧米的金儲けが中心になっているのではないでしょうか。


加瀬

私は、まだ欧米の方が健全だと思います。例えば日本のスーパーは、価格破壊の安売り競争で、利潤は1%も出ないのです。イギリスの3つの大きなスーパーでは5~7%あり、経営も従業員への福祉や、託児所などの配慮が十分にありますが、今の日本はなりふり構わず人員を削減し、正社員の比率が低いほど会社が評価されています。狂っていますね。


次回へ続く



外交評論家/(社)日本文化協会 会長 加瀬英明