9つの立国構想

CMF対談


   夢対談 時代の曲がり角


形と心が一体化した日本文化
加瀬

日本は精神的に自立していない国になっています。これも、戦後教育から徳育が欠けた報いです。


夢対談 時代の曲がり角

日本人は昔から世界のどの国よりも、「心」を大切にしてきた国です。それが言葉にも表れています。かつて日本語は、美しい言葉でした。


世界中で上に「心」が付いている言葉は、日本語が一番多く、「心づくし・心だて・心配り・心使い・心いる・心くだき・心嬉しい・心温まる・心合わせ」をはじめとして、200以上もあります。英語のコンサイスでは、ハートバーン(胸焼け)・ハートアタックル(心臓麻痺)など10くらいです。


日本人は心の民なのです。


木原

私も日本文明・文化の礎は、宇宙森羅万象の普遍性である「むすひ=多様性の融和」であり、それが「命の心」を育み、祀祭政一致の独自の道の文化が出来上がったと感じております。


加瀬

女性の衣装を例にすると、朝鮮・中国・インド・中東からヨーロッパまで、諸外国の女性の着物は見た目が綺麗で、王族など支配階級では絢爛豪華です。


日本の場合は着物の着付けだけではなく、立ち居振る舞いが美しくなければなりません。つまり心のあり方の問題で、躾がよくなければダメです。


夢対談 時代の曲がり角

茶道・華道・香道・書道から武道まで、すべてそうです。諸外国には「マーシャルアーツ=戦う技術」という言葉はありますが、「武道」という言葉はありません。


私は空手の有段者です。諸外国では「勝ち負け」を計算しますが、武道では「無心になれ。勝ち負けを計算するな」、弓道では「的をねらうな」と教えられます。戦い方も道具も違います。日本の剣は日本刀の1種類だけです。諸外国では剣は十数種類あり、戦場の状況に合わせて選びます。ゴルフのドライバーやパターと同じです。


日本刀は両手で握って戦いますが、諸外国は片手です。両手で握ると、相手に飛び込まなければならない。これも心です。宮本武蔵は『五輪書』で「斬り結ぶ太刀の下こそ地獄なれ 踏み込みゆけば極楽」と教えています。


日本の心は、朝鮮・中国や西洋の人々にいくら説明しても理解してもらえません。日本独特の和は、心を一つにするからです。


木原

日本人は縄文時代から、この世に現れている全てのものは「物の命」と「心の命」の両方によって成り立ち、その命は同じ源から発し循環していると捉えていました。縄文遺跡の水場では、そういった祠祭が行われています。今でも、日本では針・人形・包丁などを供養します。


また、先日富士山が世界遺産に登録されましたが、法隆寺や紀伊山地の霊場と参詣道にしても、日本文化は、遺産ではなく「世界資産」であると捉えています。


このように素晴らしい文化が、どうして今壊れているのか。加瀬先生はどうお考えですか。


次回へ続く



外交評論家/(社)日本文化協会 会長 加瀬英明