9つの立国構想

CMF対談


   夢対談 時代の曲がり角


日本の教育は世界最高峰だった
中條

日本の教育は世界最高峰でした。明治維新の時に、岩倉具視使節団が一年間、欧米を歴訪した時も、日本の教育は崩さないと確認して旅に出ており、イギリス・イートン校のエリート教育を見ても、日本と変わらないと。だから自信を持って帰国しました。


そして、国を富ませる為にエリート養成の帝国大学と旧制高校を作り、一心不乱に教育を行いました。


こういうベースがあったから、戦後、世界中から羨まれるような経済大国になれたのです。


江戸時代、士農工商の士の人はどんな貧しい家に生まれても、社会のエリートという価値づくりをしました。両親も子供たちも、世のリーダーになるという自覚が凄まじかった。


今、日本の子供たちの中で、「よし、この国がおかしいから俺が担ぐ」なんて少年がいるでしょうか。


夢対談 時代の曲がり角
木原

いたとしても少数だと思います。


中條

ところが自覚だけではダメで、これを裏付けたのが躾と修身教育です。


例えば、今ドラマでしている会津若松藩の日新館は、リーダーである侍の養成学校の一つです。その藩校のほとんどが『四書五経』にもとづく人間学を教えていました。その他の子供達も全国に2万以上あった寺子屋で学びました。


人間は動物ですから、躾と教育をしない限り、動物的動きをするのは当たり前です。だから「ならぬことはならぬ」、してはならない事はまず絶対させない、それが躾の一番の基本。


2番目は、しなければならないこと、せねばならないことは、裏付けを持って絶対させること。人は一人で生活するということはあり得ませんから。


躾の基本はこの2つで良いのです。当時は、躾は主に家庭で行われ、藩校では人間学が教育されたのです。


木原

アメリカの政策で禁止された日本の修身教育ですが、それを守ってこられたお一人、小池松次先生の修身の本『道徳読本』は、アメリカで3000万部を越えたベストセラーになった種本なのです。財団では平成21年に、その本を復刻させていただきました。


西ドイツのアデナウアー首相は戦後の復興のために、アメリカのレーガン大統領は学力が低下し、暴力がはびこる教育現場再建のために、サッチャー首相は教育改革のために、この本を使ったそうで、日本の教科書が直訳されていたそうです。


中條

人間学に対して時務学というのがあります。時務学とは、生きる算段の学問。要するにどうしたら早く出世できるか、どうしたら早く金を掴めるかという学問ですから、あまりに魅力的な訳です。


どちらの学問も必要なのですが、人間学を本学、時務学は末学と『四書五経』も説いています。


時には、末学に走る人がいたのでしょうが、こういう人を戦前は「本末転倒」と言っていた。しかし、今や日本は末学が本学になっていますよ。


木原

経済学の父と言われるアダムスミスの国富論には、両輪としての道徳論があるのですが、国富論だけに注目が集まった、ということと同じですね。アダムスミスは、道徳論こそ重要と言ったそうですが。


夢対談 時代の曲がり角

今は世界中で経済だけが何よりも最優先され、生命も自然も社会も崩壊させても仕方ないという考え方です。金融工学という学問すら出てきましたが、その本家本元のアメリカが経済破綻の危機にあるように、2008年の世界金融危機の時に産業革命以来、席巻してきた資本主義・市場経済主義は終焉を迎えたと私は捉えています。


日本もアベノミクス効果で景気は回復しつつあると言われますが、生活必需品の値上げラッシュ、さらに消費税率の引き上げも決まりました。



逆に、景気は後退するのではないかと心配しています。


次回へ続く



アサヒビール㈱名誉顧問 中條髙德