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人間づくりコラム

トップレスラーとして活躍中の全日本プロレス武藤敬司氏との対談~前編~

プロレス世界に「この人あり」と大活躍している全日本プロ・レスリング代表取締役社長武藤敬司氏。 武藤氏は「人に夢を与えている限り、現役を続けたい」と語り、 プロレスのイメージアップを図る様々な戦略を練っている。

武藤氏とCMF会員企業であるキャピタルモーターサイクル(東京都中野区)とがコラボレーション。 武藤氏のプロデュースのもと、 「カスタムスクーター」が誕生し、 8月31日の両国国技館でのビッグマッチには、会場に展示され多くのプロレスファンの熱い視線を浴びた。

そして、2回目のIWGP防衛戦の翌日に夢の対談が実現した。

全日本プロ・レスリング代表取締役社長 武藤敬司(むとうけいじ) 【武藤敬司(むとうけいじ) 全日本プロレス代表取締役 プロレスラー】
1962年山梨県生まれ。
全日本プロレスの代表取締役であり、プロレスラー。

2001年6月史上初の“新日本所属選手による三冠王座奪取”という快挙を成し遂げた。 2002年2月全日本プロレス移籍を果たし、その後社長に就任。 2008年4月約8年半ぶり3度目のIWGPヘビー級王者に輝く。 8月両国大会で2度目の防衛に成功。

プロレスラーと社長業 二足のワラジで奮闘中
木原
両国国技館本日はIWGP防衛のお疲れが残っているにもかかわらず、 対談のお時間をいただき有難うございます。
いや~! 凄かったですね。観戦していて何度か、ヒヤッ!!とする場面があり、 思わず大声を出して声援しました。 もしかすると、敗れる?と緊張しましたが、さすが、最後は武藤流で締めてくれました。
改めて2度目の防衛、おめでとうございます。 この度も、武藤マジックを見させていただき感動しました。


武藤
IWGP王座選手権、2度目の防衛に成功有難うございます。IWGPのチャンピンベルトは、もともと新日本プロレスのベルトなんです。新日本の大阪大会に乗り込んで、チャンピン中西学から獲ったものです。
この度の防衛戦は札幌に続く二度目の防衛戦でした。8月31日両国での、新日本にしてみればメンツにかけて、これからも次々と刺客を送り込んでくると思います。
プロレス業界から見れば相乗効果でいいことだと思っています。



木原
武藤さんは、リングネーム「グレート・ムタ」として海外でも活躍されていますが、 プロレスラーになった経緯を聞かせてください。

武藤
実は、柔道整復師になろうと思い、新日本プロレスの選手が通う接骨院で研修していたころ、 そこの院長にスカウトされました。 入門前には、坂口征二と山本小鉄両氏の面接があって、二人ともいかつくて、 とんでもないところに来たと最初はビビリましたよ。

木原
現在は、全日本プロレスの代表取締役でもありますね。

武藤
社長としての責任はきちんと取らないといけない気持ちは常にありますが、 正直言って、社長業はほとんど信頼できる部下に任せて、 俺はレスラーとして現場に専念しています。
プロレスラーと社長業、時にはタレント活動と色々なことをしていますが、 どんなことをやっていても大切なことは一緒。 チームワークです。
そもそも全日本プロレスは、ジャイアント馬場さんが作った会社で、 新日本プロレスに所属していた俺が入ったのは6年前。 代表に就任してからは、社内のチームワーク作りにも苦労しました。 馬場さんの時代から36年目を迎え、会社を長く継続していくことの難しさも感じています。
でも「明るく楽しく激しく新しく」をキャッチフレーズに、挑戦していますよ。

木原
確かに、会社を永続させる事は難しいことですよね。 それを、プロレスラーと社長業の二足のワラジをこなしているということは、 素晴らしいことです。
しかし、相撲のような国技と違ってプロレス競技の中身は幅広いので、 どのようにイメージアップを図っているのですか?

夢と希望を与える武藤ウルトラマジック
武藤
相撲もプロレスもイメージアップは同じですよ。 プロレスはあまりきれいなイメージではないでしょう。 でも、応援してくれる熱狂的なファンがたくさんいます。 だからプロレスが健全なエンターテイメントであることを、 世間にアピールしていく努力をしています。

木原
具体的にしている事を聞かせてください。

武藤
プロレス界にもいろいろな団体がありますが、全日本プロレスが自信を持って言えるのは、 他の団体に負けないクオリティーの高さです。 それを全面にして、正攻法で広めていきたいんです。
例えば、お笑い芸人と一緒に試合をしたり、 プロレスとはイメージのほど遠いサンリオとコラボレーションしてキャラクターグッズを販売するなど、 新たなプロレスファンを開拓していってます。
なかなか地道な作業ですが・・・

木原
全国の巡業やプロレスラーとしての練習、そして社長業と、 かなりハードな仕事をこなしている武藤さんだと思いますが、 健康管理はどのようにされているのですか?

武藤
プロレスラーは1年に100回以上、試合をしますから、健康管理・肉体維持は永遠のテーマですね。
俺は他人に厳しく、自分には甘いようで、 巡業に行くと各地のうまいモノを食べ過ぎたり、酒を飲み過ぎたりするので、 その分も健康管理はしっかりと気をつけています。
健康管理と言えば、私が主催している「武藤塾」という健康な身体づくりのセミナーもしています。 レスラーは日常、過酷な練習をしていますし、スタミナも瞬発力も必要だし、 健康管理の知識や知恵も持ってないと駄目なんです。 トレーニング方法や栄養学などについて、江崎グリコさんの協力を得て、 それを一般の人に公開しようということで始めたのが「武藤塾」です。

木原
素晴らしいですね。
話は変わりますが、最近は格闘技に人気を奪われ、 ファンも減っている傾向にあるように思われますが、 その点、武藤さんはどう考えていますか?

武藤
世間の皆さんは、プロレスと格闘技を同じ目線で見ているように感じることがありますが、 本来は全く別の競技なんです。
他のプロレス団体もそうだと思いますが、プロレスは単なる叩き合いではないのです。 特に私のプロレス哲学は、エンターテイメントの部分も大切にしながら、 プロレスの美学を大切にしています。 技と技を競い合いながら、その場を盛り上げ、ファンに夢と希望を与え元気になって帰ってもらう。 大げさに言えば「ウルトラマン」のようなものですかね(笑)

木原
私が武藤さんのプロレスを好きなのは、そんな武藤プロレス哲学なんです。 確かに流血したり、椅子をたたきつけたり、と荒々しいことはありますが、 最後はプロレス美学で収める。 特に、あの独特のポーズは、大人から子供まで人気ですよね。 あれは、武藤さんしかできない。 物まねスターの神奈月さんが、武藤さんのあのポーズをブランドにしていますよね。

武藤
ありがとうございます。
唯、私はパフォーマンスだけでやっているのではありません。 プロレス界をいかに上向きにするか、ということを常に考えています。 その為には、とにかく選手がいかにいい試合をするかなんです。 その場所を一つずつ増やすための方法なんです。 音楽も照明もポーズも、すべてその為なんです。

木原
なるほど。プロレスラーも役者でなければならない。 その役者が最高のプレーをしてくれれば、観客も最高のエールを送る。 武藤さんの試合を見ていると、いつの間にかプレーヤーと観客が一体になっている。 これは凄い事だと思います。 私は、『武藤ウルトラマジック』と言っていますが(笑)

武藤
そんな評価をしてくださっているとは、有難いですね。 しかし、これも木原先生のお陰の一面もあるんです。
私が、全日本プロレスの代表取締役を引き受けて以来、 一番苦しい時に、先生が「不動明王」の額を送って激励してくださった。 あれから不思議と運が良くなってきたんです。
嘘じゃない、本当なんですよ。 本当にありがとうございました。

木原
こちらこそ、ありがとうございます。
話せば長くなりますが、秘かに武藤さんの運命を占ったら、 もの凄い可能性を秘めていることがわかりました。 ただ、その為の試練も大きい。 しかし、どのような逆境も必ず克服し、周りの環境を変えてしまう。 その「星」を武藤さんは持っている。
こういう人は、なかなかいない。 必ずリーダーになるし、会社で例えるなら、倒産会社を再建するように、 人間を再生させる秘力を持ち合わせている。 だから、武藤さんについて行けば、選手をはじめ周りの人も、伸びるのです。 あとは、優秀なブレーンがいれば、言うことなしですね。

武藤

褒めすぎじゃないですか? 先生に言われてみれば、そうかも分かりませんね。 ただ、いろいろあっても私は与えられた場に、常に全力投球をしていることだけは確かですね。

後編はこちら

対談日 2008.9.1