このところ日本では、高速道路が広がるたびに、人の心が狭くなり、機能的なマンションが建つたびに、隣人への親密感や責任感が失われ、立派なスーパーマーケットやレストランが増えるに従って、家庭の食事が貧しくなりました。
豊かさが満ち溢れて、何でも欲しい物が手に入ります。しかしたった一つだけ、手に入らないものがあります。希望です。
かつて日本は、偉大な国でした
人類の長い歴史の中で人種差別が行われ、幕末から明治にかけて、私達も人種差別で苦しみました。しかし、日本だけが西洋による植民地の圧力をはねのけて、見事に明治維新を成し遂げました。
その動機は、①日本の政治的な独立を守ること、②経済的な独立を守ること、③文化的な独立を守ることでした。この3つの独立を守る為に、世界に向かって日本を開いたのです。

西洋の列強による、屈辱的な不平等条約を改正すること。また、幕末から多くの武士が、ヨーロッパ、アメリカに旅し、アジア、アフリカの人達が、まるで家畜や奴隷のように扱われたのを見て憤りました。人種平等の世界をつくることが、日本国民の大きな夢でした。
今の日本で、軍国主義は悪かったという、愚か者がいますが、明治の日本が軍国主義をとらず、日清・日露戦争に負けていれば、日本は中国にロシアによって、この美しい国土を占領され、この国土が踏みにじられていたことでしょう。
先の対米戦争は、自存自衛のために戦いました。確かに、正非は大いに論じるべきです。しかし、3年8カ月にわたり、日本国民が一致団結して、よく戦ったことは称えなければなりません。武徳を称えない国は滅びます。
人種平等を実現させた日本
私がアメリカに留学した1950年代の終わり頃は、まだ白人の黒人に対する苛酷な差別が続いており、駅やバス停、水飲み場などは区別され、テニスコートやゴルフ場から黒人は閉め出され、黒人と白人の結婚は犯罪でした。
アメリカでは、初の黒人のオバマ大統領が生まれましたが、黒人が解放されたのは、リンカーン大統領が南北戦争を戦ったからではなく、日本が先の大戦に大きな犠牲を払い、結果、アジアとアフリカが解放されたからです。日本が人種平等の世界を呼び寄せたのです。
大平内閣の時に、日本で初めて世界主要7ヶ国サミットG7が催され、有色人種の日本が1カ国だけ加わっているのを見て、私は改めて先人が、日本と世界のために多くの血を流したことを感じました。日本人は大いに誇って良いのです。
徳力の高い江戸時代
日本は天然資源も何もなく、どうしてこんな大きな力を持てたのか。それは「徳の力」です。
徳川時代は、270年続きました。世界の中で200年以上、平和が保たれた国は日本だけです。
江戸は当時、世界で最も人口が多い都市で、日本全国は3千万人位、江戸は120~130万人位。そのうち、武家と侍とその家族が50万人、町民が75万人。
わずか60人の今で言う警察官で治安が守られていました。これはいかに江戸時代の自治が素晴らしく、町人の高い徳性を物語っています。人々は礼儀正しく、礼を重んじたから、犯罪も少なかったと言われています。世界にこのような類例はありません。

また、世界では舞台芸術は支配階級に属しますが、日本の歌舞伎は庶民、能が武家階級の舞台芸術でした。
絵画芸術も、朝鮮・中国、中東・ヨーロッパまで、王侯貴族、支配階級に属していました。日本の浮世絵は庶民です。浮世絵は西洋ではジャポニズムとして知られ、19世紀から20世紀の初頭には、マネやモネ、ロートレックなど、全員が大きな影響を被っています。
今の日本橋三越百貨店の場所にあった、越後屋呉服店の年間売上げは、7万両超で20万石の藩の収入と並ぶものでした。ここの客もほとんどが庶民です。
このように、庶民の方が、武家階級よりも遥かに恵まれた自由な生活を謳歌していました。
明治に入ってからの日本の驚異的な発展も、第二次世界大戦後、見事に復興を成し遂げて、世界第二位の経済大国の地位を獲得したのも、この徳の力です。
日本の徳力は何故なくなったのか?
このように日本は徳の力によって素晴らしい歴史を作ってきました。しかし、日本の唯一の資源である徳を、もう使い果たそうとしています。
なぜそうなったのでしょうか? その一つは明治維新です。開国してから西洋を真似せざるを得なかったのが、模倣することが手段であったのに、いつの間にか、手段と目的を混同し、日本の良さが失われるようになってしまいました。
さらに、今日本が惨めな惨状に陥っている原因は、戦後の教育にあります。