9つの立国構想

CMF対談


   夢対談 時代の曲がり角


世界の動きに日本は大きく遅れている
木原

日本も今、安倍首相が東南アジアとの繋がりを…と言っていますね。


菅沼

麻生首相の頃に、自由と民主主義の価値観を共有した国々が、中国とロシアを包囲しようという構想がありましたが、今の安倍首相はロシアとの関係も重視しようとしています。


夢対談 時代の曲がり角

ロシア経済は、石油と天然ガスで成り立っていますが、今注目されつつあるシェールガスが普及すると、石油・天然ガスの価格が下がります。大きな市場であるヨーロッパがロシアからの購入をやめるとも言っています。


そこでロシアは日本企業を誘致し、雇用を増進し経済を栄えさせようということで、今、日本の存在は、プーチン政権にとって非常に重要になってきています。


しかし、日露間には北方領土四島の問題があります。ソ連時代に二島返還で平和条約を締結しようという動きがありましたが、日本は四島返還を主張。両国の関係は一歩も前進しませんでした。最近、森元首相がロシアに行き、実現性のある三島返還の交渉をし、日露関係を促進しようとしています。


これを苦々しく思っているのは、おそらくアメリカです。北方領土の問題をペンディングすれば、日露の関係は半永久的にうまくいかないという信念がありますから。


しかし、最近ここに中国が絡んできました。中国海軍はロシアと合同演習をしていますが、その艦船がオホーツク海に入りました。これはアジアとヨーロッパを結ぶ北極海航路のことが念頭にあります。


温暖化で氷が溶け、本格的に北極海航路が動くようになると、スエズ運河の紛争も関係なくなるわけです。


日本が尖閣諸島にばかり眼を向けている間に、世界の情勢は変わり、日本だけが立ち後れているということです。


日本の課題は、崩壊している現実を知ること
木原

こういう状況下での、日本の課題は何なのでしょうか。


菅沼

世界情勢の変化を全員がよく知るということは無理だとしても、いつ何が起こるか分からない時代なので、固定観念にとらわれて狭い所にばかり集中せず、眼をよく見開いて先を見なければ、何事も上手くいかないと思います。


木原

経済を例にすると、グローバリズムの中で経済(ファンドなど)が、統治機構である政治を飲み込んで動かしていますよね。


菅沼

そうですね。アメリカは輸出が低迷し、金融で一気に儲けようとして、リーマンショックで大失敗したので、今規制しようとしていますが、アベノミクスも異次元の金融緩和でお金を動かそうとしているので、相当危険だと思います。


お金は産業の血液とも言われ必要ですが、例えば今の銀行はマネーゲームの投資銀行になっています。投資は所詮博打です。理事長が強調されるように、博打は止めて原点に還り、付加価値のある仕事をすることです。


木原

日本がなぜ戦後、経済発展を遂げることができたのか。経済の仕組みをはじめ、日本は高品質で他国にはないものが作れるのか。


夢対談 時代の曲がり角

日本文明・文化を研究すると、起源は縄文時代に遡ります。その大きな特徴の一つは、世界のどこにもない素晴らしい精神文化にあります。


しかし、日本は明治維新、さらに戦後、そしてバブルの崩壊と共に、独自の文化を捨て去ろうとしています。経済発展の根源がなくなるわけですから、経済が衰退するのは当たり前です。


その象徴として顕著なのが霊性の低下です。だからこそ国づくりの前に人づくりが重要と考え活動をしています。


菅沼

今、理事長が啓蒙し活動されていることは、まさにその通りですし、そうならないといけないのです。


しかし、いくら話をしても撥ねつけられる。それには原因があるのです。


戦後、アメリカのベネディクト女史が書いた『菊と刀』に、自信喪失していた日本人は皆涙を流して喜びました。日本人の精神文化をこれ程までに書いてくれるのかと。しかし、アメリカのGHQ政策はそれを逆手に使いました。


教育や憲法の抜本的改正、歴史教育の廃止、自虐史観など諸々によって、日本人の考え方を全く変えました。その結果、日本人は理事長の言われる反対の事しか考えられなくなった。


例えば、憲法には結婚は両性の合意のみにより成立とありますが、現実は縦にも横にも色々な繋がりも背景もあります。結婚というのは、そんなに単純なものではありません。


また、今の学校教育では何よりも、子供の人格を優先しています。しかし、子供は人格形成の途上にあり、しつけは重要です。


木原

人権も確かに大切ですが、人間形成の前に、権利だけ守り人間擁護をしすぎると、親も叱れなくなります。


今は権利が優先し義務を怠る空気がありますし、自由をはき違えています。社会に一定のルールがあってこそ、自由は成り立ちますが、今は我さえ良ければの自由です。


もっと根本は、自由と平等という両立しないものを、GHQはあえて憲法に導入しています。


菅沼

そうです。戦後、アメリカが日本に何の目的で何をしてきたのかよく知る必要があります。日本人が当然と受け止めてきた事が、実は裏にはアメリカの非常に巧みな、しかも広範囲な戦略がありました。


そして、それは今でも続いており、日本は非常に厳しい状況に立たされていることを、知らなければなりません。


例えば、憲法9条も枝葉末節の話で、本当に重要なのは、「個人の尊厳」の名の下での日本の家族の崩壊です。TPPも、表から見ると単なる貿易交渉ですが、裏側では民間企業による国家乗っ取りの意図が見える。


表の世論の裏側に隠された真相ありです。それを知っていただかなければ、という目的で私は本を出しています。


木原
夢対談 時代の曲がり角

先生が今、立て続けに出版されている本は、私の支えですよ。


事実、日本の家族・伝統・文化・社会の仕組み等々、日本が日本でなくなりつつありますが、平和ボケなのか、このことに気づく人は少ない。


日本は古代から自然を含めあらゆる命と共生し良いものに新しい良いものを重ねる「十二単衣共生型の文明・文化」を育みました。反面、欧米は自然も人も征服し支配する文明・文化で、今の世界の仕組みも欧米型です。


現代社会の問題の根源と、これから先、具体的に何をすれば良いかの対策を、そのプロセスや文明・文化の違いからお話するのですが、壁に話をしているように感じることがあります。


菅沼

こういう本当のことを話する人は、今日の日本社会では異端児みたいになりますね。


ただ、本当に日本のことを考えるならば、どんなふうに言われようと、常に主張していかなければいけないし、何としても自らの歴史を回復するべきです。そうしなければ、日本は終わりです。


木原

同感です。私は戦後以降のそれを「日本解体のシナリオ」と、菅沼先生は「神国日本八つ裂きの超シナリオ」と言われていますね。


菅沼

今の日本社会は、表面的には平穏に見えますが、理事長も解体と言われるように、八つ裂きにされているのが現実なのですよ。


「人づくり」こそ安全保障の基本
木原

私は、世界経済植民地化戦争と呼ぶのですが、多極化・多様化し、ますます混迷する中で、今後の国づくり人づくりには何が必要とお考えですか?


菅沼

木原理事長が仰っていることを突き詰めると、「日本は他の国とは違う」ということですよね。


夢対談 時代の曲がり角

日本はどんな国難にも、必ず救われてきました。元寇の時も偶然の台風によって国難を免れました。日本人はそれを神風と考えてきたのです。


今経済も、米国・欧州・中国・韓国などが難しい中で、日本だけが上向きですから、私は絶望することはないと思います。


しかし、理事長も言われているように、政治家も官僚も、アメリカの政策にまんまとはまり、日本人の霊性は極めて低下しています。劣化した民族国家は滅びるしかありません。


だから、まずもって「国づくり」の前に「人づくり」が必要ということです。


木原

日本文明・文化を一言で「祀祭政一致」と言っています。祀祭政はすべて「まつりごと」と読みますが簡単に言うと、祀…生命を大切にする、祭…自然を大切にする、政…社会を大切にする。日本は祀祭政を融和し調和させてきました。


その根源は、宇宙森羅万象の普遍性(=むすひ)で、これこそ日本人の霊性だと捉えています。


日本文明・文化への回帰と再生、そこからの霊性教育こそ、今の日本に必要だと活動しておりますが、人づくりは最優先の安全保障にもつながると考えてよろしいでしょうか。


菅沼

国を守るのは、ミサイルでもオスプレイでもありません。


夢対談 時代の曲がり角

眞の安全保障とは、国民全体が自主性を持って「我が国は我々日本人が守る」という気概や自尊心を持つことが基本で、アメリカに守ってもらうものではありません。


日本は、本当の意味で独立国家にならなければなりません。また個人も企業も、自分の会社は自分が守る、そういう気概を持った人づくりこそ必要です。


理事長のされている運動は、ものの考え方を変換させる仕事ですから大変です。人の心はそんなに急に変わるものではありませんから。しかし、私から見て「人づくり」の運動は、着々と進んでいると思いますよ。


木原

ありがとうございます。微力ではありますが、これからも国づくり人づくりに精進して参ります。


菅沼先生には財団の評議員としても、今後ともご指導のほど、よろしくお願いいたします。



アジア社会経済開発協力会 会長 菅沼光弘