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[企業づくり]宇宙本位経営学の普及と援助

企業づくりコラム

先人の碑に込められた感謝の心【樋口廣太郎】

もともとアサヒビールは素晴らしい会社であり、素晴らしい従業員がいた。 ただ、それが生かされていなかっただけだ。 私はその力を思う存分発揮してもらうためお手伝いをさせていただいたにすぎない―――

樋口廣太郎と言えば、奇蹟の逆転劇と言われたアサヒビールの 立役者である事を知らない人はいないであろう。 成熟した業界と誰もが疑うことはなく、その中で低迷を続け「夕日ビール」とまで言われていた この会社を復活させたもの、それは「当たり前のこと」と「感謝」であると樋口氏は言う。

お客様の声を聞く
コストダウンは、現代においては当たり前の概念である。 経費節減のために、リストラはどこでも実施され、 低価格な材料などの調達のために、下請けが犠牲になることも多い。 しかし、コスト削減の余波ではないかと思われるようなリコール、 企業の不祥事はあとをたたず、毎日とは言わないまでも、 組織の幹部が頭を下げる映像が増えている印象がある。

樋口氏の当たり前は、このような「当たり前」ではない。 ごく単純なことでありながら現在忘れられていること――― お客様の声を聞いただけなのである。

ニーズをいかに捉えるかは一つの戦略となっているが、 樋口氏のニーズの捉え方は、企業型主導の「戦略」ではなく、本来の商道にある「感謝」である。 いかに売るかではなく、どうすればお客様に満足していただけるのか、 を追及していったのである。

『同業者とシェアの競争することが目的ではなく、自分たちの原点はお客様にある。 お客様の求めるものを叶えたときにお客様の満足がある。 市場シェアはその結果に過ぎない。だから、さらにお客様の評価を謙虚にきくことだ』

と。そして、消費者の求めていたビールにとって二律背反する 「コクとキレ」を実現させ、市場調査を繰り返し、爆発的な人気となった アサヒスーパードライは、最終的には消費者がアサヒの味を決めたことになっている。

反目を融和させる
アサヒスーパードライの成功は、また、会社の中に相乗効果をもたらしている。 通常反目しあう技術部門と営業部門の融和である。 お互いがお互いを感謝する職場へと大きく変化しているのである。 そのような会社が発展しないわけはない。

能力主義と言われる、個人プレー的なものや、アウトソーシングという委託の形態も出てきている。 また、世間一般では、消費者の興味をひく魅力的なコピーは沢山ある。 それに引かれて爆発的な商品になるものもあろう。 しかし、その中身が本物なのかは、消費者が決めるのである。

樋口氏は言う。
みんなが一丸となって目的に向かって走っていた高度成長期には 金太郎飴集団でよかったのかもしれない。 でも、価値観が多様化した現在の日本では、 桃太郎集団とでもいうべき機能集団であることが必要です。
例えば、人が登れないところへ登っていける機敏さを持ったサル型の人、 すぐれた嗅覚とスピード、忠誠心、人より低い目線を持つイヌ型の人、 空を飛んで高い位置から全体像をとらえるキジ型の人。 リーダーの桃太郎は、そうした異能の人達が集めてきた情報を処理し、 鬼退治という前例のないことに挑戦する為に、綿密な計画を立てるのです

すべてはお客様のためにという感謝を、樋口氏を桃太郎に、 社員が一丸となって取り組んだ成果。 それが奇蹟の大逆転を生み出しているのである。 逆境の時代は、過去の前例にとらわれず新しいことに挑戦できるという、 この樋口氏の事例から、今の経営に置き忘れているものが見えては来ないだろうか。

先人の碑
スーパードライが爆発的な売れ行きの中、樋口氏は一つの提案をしている。 それが大阪吹田市にある『先人の碑』である。 きっかけは、キリンビールの小西会長が
「うちは高野山に会社の先輩を祀る供養塔を建てたら、 この後業績は上がる一方で、いいことばかりなんですよ。 これからお参りに行くところです」
という言葉に衝撃を受けたからである。

もともと祖母から感謝の心を育まれていた。
『先人を大切にする会社がすたれるわけがない』
その確信と、さらに、高野山大学で教授をしている友人に
「先人をお祀りしているけれども社業が衰退している会社はないか」
と尋ね、
「そんなものがあるわけがない。おまえも随分バカなことを聞いてくる奴だな」
と一喝されたという。

碑に祀られているのは、問屋・飲食店・原材料供給会社・お客様
今あるわれわれの生は、これらの尊い死者たちによって 支えられていることを忘れてはならない

提案者であり建立者としての、樋口氏の名前はこの碑には入っていない。

本物の当たり前
材料費にはお金をかけ、人員整理は絶対にしない。 収益が上がらないのは経営者の責任であり、判断を誤った時は素直に謝る。 そして、運を大切にする。 私の経営の原点は、「感謝すること」にあります。 この世の中で、この仕事の存在が許され、人として生かされていることには、 感謝しなければなりません。 しかも、商品はお客様、流通の方々に育てていただいています。 その意味で、私はお客様に感謝し、酒販店、特約店の方々に心から感謝しています。 そして、神仏に、社会に、万物に感謝しています

当たり前のことを当たり前にできていない社会が、今、当たり前になっている。 本当の当たり前が何かに今、気付かなければならない時ではないか。

引用 「松下幸之助と樋口廣太郎」 皆木和義著より