[人間づくり]総合人間教育学の普及と援助

CMF対談


【石橋良三(いしばしりょうぞう)】 【石橋良三(いしばしりょうぞう)】

1948年島根県生まれ。
'74年日本歯科大学卒業。'76年石橋歯科医院 院長として'95年まで開業。
'91年広島県議員初当選。以降6回当選。
文教委員として広島県公教育の荒廃の実態を知り、 その正常化のために正面から取り組む。
その活動は『日本時事評論』『週刊朝日』『産経新聞』『正論』『週刊新潮』など、 多くのマスコミにも取り上げられ、 とうとう国会議員をも動かし、文部省(当時)としては異例の 現地調査(広島県教育委員会、福山市教育委員会)、 是正指導に踏み込ませた実績を持つ。


木原 本日はお忙しい中、貴重なお時間を割愛いただき、有難うございます。

石橋 どういたしまして。 先生の「縁・因・果の法則で運命は決まる」を拝読させていただき、 私も一度お話をしてみたいと思っておりました。

木原 私もです。 広島県で「教育と言えば、石橋。石橋と言えば教育」と県政において、 教育再生への厳しい戦いの道程でのご苦労は、 筆舌しがたいものがあったとお聞きしています。

石橋 第二次世界大戦の敗戦によって、失われたものの中で、一番大きなものが「教育」であり、 広島県に限らず、教育の荒廃は、すさまじいものがあったと考えております。 県政に携わる者として、一番力を入れてきたのが「教育改革」で、 お陰さまで、ようやく光が見えてくるまでになりました。

木原 国家の盛衰は「教育で始まり、教育で終わる」といっても過言ではありません。

日本という国は、無資源国ですから「教育資源の世界資産」こそ最大の国家政策と思い、 「教育徴兵制度」の創設を提唱しております。

石橋 その通りだと思います。「教育の世界資産」遺産でないのがいいですね。 遺産は使えませんが、資産は使えますものね。(笑)



教育荒廃の元凶
木原 先生は、戦後の教育荒廃の元凶について、どのようにお考えですか。

石橋 いろいろな要素があり、一概に申し上げられませんが、 「歴史教育」「宗教教育」「心の価値」の「3つの喪失」があるのではないでしょうか。 そして、その震源は、明治維新以降の欧米化偏重にあると思っています。

木原 確かに、明治以降「アジアで唯一欧米化に成功した国」と言われておりますが、 極端な表現をすれば、欧米文明・文化は「物の価値」中心で、 一言で申せば、「金」ですね。

日本も、「心の価値から物の価値」への転換へまんまと染色されてしまいました。(笑)

石橋 もちろん、欧米文明・文化によって自然科学は発達し、 物質文明は繁栄の極みにまで上りつめましたが、 それと引き替えに「心の価値」を失いました。 まさに、「物で栄えて、心で滅ぶ」ということですね。

木原 「親殺し・子殺し」事件を始め、 考えられないような悲劇・犯罪が日常茶飯事のごとく起こっており、 まさに「亡国」の観があります。 「親殺し・子殺し」は日本独特の現象だそうですが、これは、異常ですね。

石橋 私もそう思います。異常です。

木原 今の日本の窮状を建て直すにはやはり「教育」ということに尽きると思うのですが、 先生はこれから先どの様な教育が必要だと思われますか。

石橋 沢山ありすぎて何から手を付ければ良いのか選択が難しいですが、 先ずやらねばならないことは、
  • 国を愛する心の教育
  • 正しい歴史教育
  • 道徳教育(宗教教育)
  • リーダー教育
などが挙げられると思いますが、 今、私が最も取り組みたいと思っておりますのは 昔の「元服式」の現代版、仮に「立志式」とでも申すようなものです。 年齢的に大きなターニングポイントとなる「十四歳の春」にこれを地域社会で執り行い、 子供達の健やかな成長を祝い、 そして子供達は地域の大人達に見守られる中で将来に向かって自らの志を立ててゆく。 すなわち子供から大人へと脱皮をしていくわけです。 多感な時期にそのような体験をすることは子供達にとって非常に重要であると考えています。



古神道の復活
石橋 教育における宗教の役割は、とても大きいと思っております。 ただ、今の宗教では限界があると思います。 もっと、ユニバーサル(普遍的)なものが必要であり、 その意味において、「古神道の復活」こそが 今の日本を甦らせるキーワードの一つだと思います。 なぜなら、そこに日本人の「ふる里」があるからです。

木原 私も弘法大師空海さまと時空を超えて、二度の不思議な霊的体験をし、 早や二十三年目になりますが、「宗教的価値の復活」こそ、 焦眉の急務ではなかろうかと思っております。 但し、先生が仰るように、「宇宙的な超宗教」であるべきと思います。

石橋 歴史を振り返ってみますと、宗教の功罪は種々ありますが、 車で例えるなら、「ブレーキ」の役割を担ってきた、 つまり社会の制御装置としての重要な位置にあったと思います。 その宗教が魅力がなくなってしまっている。

今世界を動かしているのは、キリスト教、ユダヤ教、イスラム教の三つの宗教に基づく国ですね。 これらは皆「一神教、つまり自分たちの宗教が一番正しく、他を認めない」という宗教です。 今の世界の混迷もこの三教と無関係とは思えません。 その点、古神道は「多神教、つまり異なった宗教を融和せしめる魅力」を内包しております。



日本文明・文化の根源性に立ち還る
木原 今こそ、日本文明・文化の根源性に立ち還る時です。 日本文明・文化には、宇宙的霊性が内包されており、 それこそが古神道なのですが、 それに仏教・儒教・道教などが融和され出来上がっており、 球体に近いですね。

前著の「誇れる国づくり魅力ある人づくり」は「日本国の運命論」なのですが、 この度、出版した「縁・因・果の法則で運命は決まる」は宇宙的視座にもとづく、 人間としての「運命論」であり、 「成功・幸福理論」であると確信しております。 しかし、それは又、日本文明・文化そのものでもあるのです。

石橋 拝読させていただき、先生の永年の研究の成果であられるこの度のご著書は、 今までにない温故知新の運命論・成功幸福論であり、 日本人が失ってしまった「生き方の財産」でもあると感じました。 特に「縁がまず先」であるという説は初耳でしたし、新しい発見でした。

木原 有難うございます。教育の重要性を、 宗教の領域まで踏み込んで生の声を聞かせていただき感銘しました。 もっと時間が欲しいところですが、先生の県政での益々のご活躍をお祈り致します。



2008年8月9日 産経新聞 掲載