[社会づくり]人間環境事業の推進と援助

CMF対談

小池松次 餓死迫る日本 第2回

小池松次(こいけまつじ) あすか会教育研究所代表】
昭和3年佐賀県生れ。長崎青年師範学校(現:長崎大学)を経て、東京教育大学教育学科(現:筑波大学)卒。幼稚園から大学まで幅広く
教育学の実習と講義の実務に専念、教育再建を提案し続けている。
著書「修身・日本と世界」は、徳育指導・国民教育の貴重な資料として世界的に認められ、1996年には、TIME誌に授業風景が掲載された。国際比較教育研究所元所長。あすか会教育研究所代表・NPO法人「竹の会」副会長。

日本の食糧輸入事情
木原 日本は経済は強いですが、資源はあるようでない。だから輸入に頼って加工して、輸出しています。外圧で資源が日本に入らなくなると、日本はたちまちお手上げですね。

小池 そうです。工業原料などは後回しにしても、1番は食べ物です。
日本人はいったい、どれだけの輸入食糧を食べているか。考えた事がありますか?

木原 ありません。

小池 先生は餓死するかも知れませんよ(笑)
1億2000万人が、自分の体重の10倍の食糧を輸入しています。その他に、計算できない位の農業用の燃料、石油を輸入しているんです。
窒素リン酸カリだって莫大な量です。
これは計算していません。それらがいつ来なくなるか、分からないんです。
 
木原 日本はこの10年が非常に大事になると、私は思っています。
特に食料問題です。急速に成長している中国市場が、12億人の食料を世界から輸入すると、日本には入らなくなる事は、論理的に誰でも分かります。だけど、現実にそういう事に対して、政府は何故対策を打たないのでしょうか?

小池 それは、日本は世界でも優秀な技術国で、工業製品を輸出するので、国際経済の建前で代わりに食糧を輸入しているからです。しかし食糧は安全保障ですよね。いくら工業立国といいながら、国民を助ける責任が、政府にはありますよ。

木原 土地のように、国民に直接必要な物を売買の対象にしてはいけないと、私は考えています。
アメリカ中心の市場経済は、生活必需品すら金儲けの道具にしてしまう。これは怖いですね。
輸入と輸出のバランスは崩れますかね。

小池 NHKも少し世界情勢をバラしていますが、食糧の自給ができないようになったのは、まんまとアメリカの戦略にはまったのです。
中国はもともと自給自足できる国でした。そこにアメリカはトウモロコシを餌にした畜産業を導入させました。国の食料が畜産業に回ったのです。結果、中国も食糧が自給できなくなってきた。
これは、アメリカの戦略であって、アメリカは武力が強いだけじゃなく、食糧でがんじがらめにする作戦を取っているんですよ。まず日本、次は中国、その次が多分インドでしょう。

木原 石油・食糧・情報、もちろん金融も。それらをアメリカは全部握っているわけですね。


食糧パニックは起こる?
小池 恐ろしいでしょう。
私は、今すぐ食糧自給率を立て直そうというのじゃなくて、本当の自給率は1%も無い、ということを自覚して欲しいのです。
すると、いつ食糧が来なくなっても困らないように備蓄をしようとか、家庭菜園作ろうとか、自覚するじゃないですか。
私の話を聞いて実際始めた人もいますよ。
 
木原 知人が半農半民、農業専業だと食べられないので、土日は農業をして平日は勤めたらどうかと言っている方がいますが、これは現実味を帯びてきますね。
 
小池 オイルショックの時(和48年)神戸でトイレットペーパー騒ぎが起こりましたね。
あるスーパーにたまたまトイレットペーパーが無かっただけなのに、主婦たちが大騒ぎになり、警官隊が出動してケガ人が出たんです。携帯電話など無かった頃、その日のうちに、東京に飛び火し、翌日には東京全部のトイレットペーパーが2倍にはね上がりました。
慌てた通産省の事務次官と、紙業課長が緊急出演して、「皆さんトイレットペーパーは十分にあります、買いだめしないでください」と。実際にはあり余っていたのですから。
間違った情報でも日本中を巻き込む大騒ぎになった。
では今度、本物の食糧のストップのニュースが流れたら、どうなるでしょうか? 

木原 ちょっと想像がつかないくらいの大パニックでしょうね。歴史は繰り返すといいますから。
かつては、第一次産業というか農業狩猟時代がありました。それから、産業・工業社会、情報化社会、高度情報化社会へと変わりました。しかし、それが行き詰ってきています。するとまた、内容は別としても農業社会に戻る要素が非常に強いと感じていました。
私も「食」というところから捉えた第一農業産業を、今一度見直しをして復活するために、1次産業、2次産業、3次産業、これを全部足して6次産業を作ろうという案を実はずっと持っていました。
特に最近の失業率などの問題があり、片や食料問題がある。また、先生がご研究された自給率1%の裏付けがとれると、本格的にしなきゃいけないと感じますね。

小池 反省すれば、日本は救われるんですよ。
日本の国土の自給自足は6000万人程度で、明治以降、推移してきました。それを超えたから移民していったのです。100年前のハワイ移民、ブラジル移民、昭和10年以降の満州移民。
日本の自然面積の1割はいま休耕田です。それを利用して自給自足すれば、6000万人は生きられるのです。しかし、残りの6000万人は難しいかもしれません。
そして、お米だけでは6000万人しか生きられないので、水田の裏作に小麦を作れば、自給率高まるでしょう。それで最小限の食糧は確保できます。しかし、困らなければ反省しないですね。反省すれば助かるから、そのきっかけになれば良いと思っているんです。
 
木原 私は先生が考えられた生き残りのシステムを定着させないといけないと思います。一つの運動にされたらどうでしょうか?
ところがこれも難しい問題があります。現実はそこまで迫っているのに、国民はそこまで分からない。大変だ大変だと言うけど、具体的にそれを形にしない人の方が多いですね。
また、情報も本当の事が伝わりません。本当の事をしようとすると、企業とかが抹殺するとか、そういう仕組みがありますね。
しかし、時代は変わってきています。先生が仰るようなことに目覚めてくる人たちが、増えてくると思います。
実は、不思議なんですが、私は昭和60年の頃に、将来食糧危機が必ずくるから、お金があるのなら山と田んぼを買えと言っていた事があるんです。
しかし先生。出版社がこの本の出版をよくOKしましたね。
 

きっかけは毒入りギョウザ事件
小池 苦労しました。完成して半年間、私の仲間、影響力の強い皆さんのお力を借りて、60社もの出版社を回ってもらったんですよ。しかし反応はゼロでした。「食料パニックがくると言うのは、著者の小池さんだけですよ、国民は思ってないから売れるわけないでしょう」と言って断られるんです。
ところが半年以上経った平成20年の2月、毒入りギョーザ事件が起こりましたね。あれで世の中変わりました。今まで断っていた出版社の編集長や社長が、私のうちまで押しかけまして、「小池さんの言うのが本当かも分からない」という事で、やっと日の目を見たんですよ。
全く偶然のチャンスでした。

木原 先生の活動は、その必要性が20年先か40年先にようやく分かるようなものですね。
少子高齢化の人口予測グラフを書きますと、6000万人位になるというシミュレーションがひょっとして出来ているのではないですか?
それと先生の自給率6000万人が、何か繋がっているように感じるのですが。

小池 はい、本には適正人口なども詳しく書いてあります・・・。
今の日本は、少子化対策として担当大臣まで作って、1億2700万の人口をそのまま維持しようとしています。
しかし、現在の人口は戦後全く偶然になった数であって、維持しなければいけないという根拠は何もないのです。
木原 少子高齢化になると産業が栄えない、不景気になるというのが一般の論理です。しかし、適正を考えた時、日本がこれからも続いていくためには、国土の森林や田んぼなどの比率からすると、6000万人位が1つの標準ということですね。
私は日本は不思議な国だと思うのですが、必要な事が先手をうつように、世界に先駆けて神図り的に知らされていると感じます。
例えば、毒入りギョーザ事件もそうです。この事件によって食糧問題が表面化する。そういう方向に何かうまくレールが敷かれているような・・・。何かスパイラルと言いますか、リズムが出来ているんじゃないかと。
しかし、残念ですが政府や国民がまだ目覚めてないというのが、問題の根幹だと思います。

小池 日本の事を言うと皆さん信用してくれませんので、私はイギリス・フランス・ドイツ3国と、日本の食糧自給率・国土面積・人口密度を並べたんです。
そうすると、よく分かるんですよ。
世界で1番食糧が余っているのは、輸出専門の小麦・トウモロコシのアメリカですけど、何と世界2番目はフランスなんです。フランスはブドウ・ワインを輸出すると思っています。
日本の国土と同じくらいの面積の国ですが、人口は日本の半分で食糧自給率130%を超しています。日本は何の準備もせずに工業製品を輸出しているだけですから、早くそういう自覚を持って欲しいですね。
 
木原 私は精神世界も説いているのですが、食べ物と精神は繋がっているんですよ。人間の成長過程で、「食」というものは非常に大事ですね。
利便性があってチルドや添加物・・・という事になっていますが、この見直しは必要なのです。
食が精神と繋がっているという視点からだと、できるだけ自然の物が望ましいのです。
ですから、食糧問題はいのち(餓死)につながりますから、こういった事をきっかけに、食の見直しに繋がればありがたいと思います。


食糧危機は簡単に回避できる
小池 食糧危機は、簡単に回避できるんです。いつ始めても良いからです。
ジャガイモは年2回採れるから、3月植えたら6月、9月に植えたら11月に食べられるので、いつパニックが来ても年2回ですから、どこかで間に合います。
作物は秋から冬にかけては撒けないし目が出ないけど、秋冬から準備をして、春から種まき、苗植えの準備をすれば、わずか1ヶ月で収穫できるものもある。
1年に1回しか採れないサツマイモを、6月に植えて、10月の収穫まで生き延びる方法も書いてあります。そうするともう、未来永遠に生きられます。
また例えば、青汁で有名なケール野菜。キャベツの仲間で地中海ではどこでも自生しています。
私は30年間栽培して、品種改良しています。
キャベツは巻くから栄養がなくなるけど、ケールは巻かないキャベツで、いくら取っても上に伸びるんです。しかも、キャベツですから1年中作れて、365日食べられます。
パニックが春に来たら、すぐ3ヶ月で食糧自給できます。この方法を本に書いているのです。

平成19年度の3月から平成20年度の7月までは苦労しましたが、お陰で8月に本が出ましたので、平成21年度まで本のPRを一生懸命して、1年間で普及したら、私はまた本職の、道徳の教育に戻りますので、ぜひ応援してください。


小池先生のご著書紹介