[社会づくり]人間環境事業の推進と援助

CMF対談

小池松次 餓死迫る日本 第1回

小池松次(こいけまつじ) あすか会教育研究所代表】
昭和3年佐賀県生れ。長崎青年師範学校(現:長崎大学)を経て、東京教育大学教育学科(現:筑波大学)卒。幼稚園から大学まで幅広く
教育学の実習と講義の実務に専念、教育再建を提案し続けている。
著書「修身・日本と世界」は、徳育指導・国民教育の貴重な資料として世界的に認められ、1996年には、TIME誌に授業風景が掲載された。国際比較教育研究所元所長。あすか会教育研究所代表・NPO法人「竹の会」副会長。

日本の自給率は1%
木原 今日は本当にお忙しい所ありがとうございます。
先生は教育学者であり、修身教育の権威でいらっしゃいます。 先生がまとめられた修身教育は世界中で取り入れられています。
そんな先生が、この度『餓死迫る日本』という本を出版されました。 日本の自給率は1%しかないという画期的なものですが、 この本を書かれた動機からお聞かせください。

小池 最近その質問はよくされます。
実は昨年2月までは、教育学者として50年間道徳教育専門に活動していました。しかし、3月1日から方針を変え、今からは食糧問題をやると決めたんです。

何故かと言いますと、安倍晋三さんが総理になられ、昨年12月25日に教育基本法を改正しました。その時、私のこれまでの仕事は終わったと安心したのです。ところが、総理の主義主張を、何と文部科学大臣と文部科学省の主要審議会の会長が、しないと言うのです。総理の指示を拒否するわけですから、50年してきた道徳教育の再興なんて方法がないと悟りました。そしてもうこれ以上時間を使えないと。

それならもう1つ私には打つ手があると思いました。それが農業だったのです。
政府は日本の自給率は39%と発表しています。テレビも新聞も政治家も学者も国民も、それを信じています。しかし、国民は本当の事を知らされていません。私が計算すると、どうしても1%も無いんですよ。こういった主張は私が初めてではないですか?

木原 それはどういう事ですか。

小池 39%ということは、国民の人数に換算すると、 1億2千万のちょうど5千万人分の食料を自給できるという訳です。 残りの7千万人は、まあ困るだろうというぐらいで、危機感はゼロです。 餓死する人はいないという事ですよ。 しかし、国民は騙されています。
教育から農業へ転換したのも、このことをバラそうと思ったわけです。 そうでなければ大多数の国民が餓死します。
そして、この現実とどうすれば生き残れるのか、という事をまとめたのがこの度の本なんです。

【米】
耕運といって耕すのは、全部トラクターがやっています。 昭和30年までは、耕運機はゼロで全部牛や馬がしていました。 日本中に400万頭の牛と馬がいたんです。 化学肥料はなくて全部人間と牛馬の糞尿だったんです。 だから自給自足できたんです。
昭和35年に少しずつ耕運機が入ってきて、昭和40年に全て耕運機に変わった。
いまは、田植えも稲刈りも脱穀も、すべて機械がしています。 現在の農業はすべて石油を使わないとできないんです。
また、肥料の窒素硫酸カリも100%輸入です。 農業で使う温室のビニールもタイプもコンテナも灯油も、輸入なんですよ。 今の日本は、輸入の石油と化学肥料と農薬がないと、米は1%も作る方法はないんです。

その石油をはじめ化学薬品などを何と政府・農林水産省は、国産として計算しているんです。
もしも、石油がなくなったら、トラクターの代わりに固い水田を鍬で人間が耕さないといけませんよ。 昔のように牛や馬はいません。 しかし、人が1日耕してもせいぜい6坪です。 日本中の1農家の土地はその500倍です。 石油がなければ作業ができないんです。 だから自給自足はむりなんですよ。

【鶏卵、鶏の肉】
鶏卵の自給率は95%と発表しています。
ところが餌はすべて日本でほとんど作っていない輸入のトウモロコシです。 日本中で採れるお米の、2倍のトウモロコシを毎年輸入しています。
そのトウモロコシは、鶏も豚も乳牛も肉牛も食べています。 輸入トウモロコシを食べた鶏の卵が、国産に化けているのです。
つまり、鶏卵の自給率は実際は1%以下です。

【魚】
お魚の自給率は59%と政府は発表しています。
ところで、今年は、石油の急激な値上がりで、大きな混乱がありましたね。
6月-日本海のイカ釣り船3000隻が、一斉休業。
7月-全国漁業組合20万隻の漁船がストップ。
8月-北海道と東北のサンマ漁船が、全隻休業。
この事からもわかるように、実際に石油がストップしたら、お魚1匹も獲れない。自給率はゼロですよ。

これらの資料は、全部国の統計を使っています。国も把握していない統計が結構ありました。 例えば、肥料の統計は政府にはなく、私は全国を歩き情報を集めました。
しかし、この本は脅しのために書いたのではありません。生き残る方法がないといけません。
方法としては一つあります。それは、エタノールの原料として、アメリカの大豆、ブラジルのさとうきび、それに匹敵するすごく優秀な資源が、日本には無尽蔵にあるのです。


6000万人が餓死しない方法
木原 それは何ですか?
 
小池 切らなきゃいけない間伐材です。その本数を調べたんですが、農林水産省や林野庁には正式なデータがありませんでした。それは、日本国土の全山林のうち、国有林は3分の1しかない。国有林のデータはあっても、3分の2は民有林ですから、手も足も出ないわけです。そこで森林組合を回り調べたんです。
何と1億2千万人の100倍の間伐材、100億本を切らないと山が荒れる。切れば切るほど、山が助かり、国土の保全につながるのです。それをエタノールに使いましょうと。
これをしますと、国土の保全と同時に、農業や漁業に使うエタノールは30年間は賄えます。
初めての私の提言です。是非5年以内に政府は実行すべきですが、まずやらないでしょう。

木原 しかし、このままでは万が一の時、多くの国民が餓死することになります。

小池 そうなんです。だから私は、自分の家族どころか今まで世話になった皆さん全部を、餓死させないようにしなきゃいけないと思いました。そこで、6000万人を助ける方法があるんです。

私は、国民の皆さんに大変な恩義があります。私は佐賀県と長崎県の間の大変な山の中で生まれました。電気のない村で、電気のない学校に通ったんです。
実家は農家で、私は農学校に入りました。5年間行くと少し勉強になるんですが、大東亜戦争がひどくなり、4年生で学徒動員に行きました。三男坊でしたから、戦後は、跡を継ぐ農地もなく、家は貧乏で上の学校に行けない。ところが貧乏人にも行ける学校が師範学校でした。学費も生活費も政府が応援してくれます。そのお金は、日本中の皆さんの税金です。お陰で私は、学校に行けたんです。
学者になる為に東京に来て、東京教育大学を卒業し、大学に5年も残ったんですが、全部の学費が奨学金です。だから私は償い切れないくらいの恩義を、国民の皆様から受けているわけです。
それで生きているうちに恩返しをしたいと。
木原 どのような方法で、助けるのですか?

小池 雑草のすばらしいエネルギーを借りて作物を作る方法を、自然農法と言います。
私はこれまで有機農業をこの30年してきました。この農法は田畑を耕すんです。肥料をやって草取りをするんです。でも来年からは、有機農法をやめて「自然農法」をします。
土を耕すことなく、肥料をやらず農薬を使わないで育てるんです。これは私が実際に一緒にやってみませますよ。鍬1本で、きれいに作物が採れます。
草が伸びると作物が育たないので、1ヶ月に1回切るんですが、刈り取った草をそこに置くと、すぐ翌年には肥料に変わる。根っこにコオロギやミミズとかウジ虫がいないと駄目なんですが、雑草の勢いを借りて苗を植える、種を撒く所だけ土を出すんです。

木原 なるほど。善玉菌と悪玉菌がいて、悪玉菌をなくすと善玉菌もダメになると聞いたことがあります。私は共尊共生と言っていますが、共生の論理が成り立つんですね。

小池 山では肥料を撒かなくてもアケビや栗や柿が採れるじゃないですか。それをするんですよ。これから日本中に広めるのは無農薬、無耕起、無肥料の自然農法を皆さんに伝授します。
農地は農家の1戸平均は1町5反、4500坪です。放棄してある農地を、5人あるいは10人ぐらいの仲間が集まって、共同で借りれば良いのです。これで、5人家族がたった300坪でゆうゆう自前で完全自給自足できるのです。
 
木原 現実の世界で私が疑問に思うのは、例えば金融恐慌の中でオバマ政権は、保護主義に変わるという噂が今あります。そういう中で、現実に輸入が止まるということはあるのでしょうか。

小池 ありますよ。
私は、大東亜戦争が始まった時の石油の備蓄量や生産量、特攻隊の燃料をどうやって工面したか調べてみました。すると、政府の統計はゼロ。何と石油連盟が統計を持っていないんです。探し回ってとうとう見つけたのですが、たった63年前、日本には石油がなかったんです。
戦後の3年は、日本中で正に『餓死せまる日本』だったのです。それと同じことが、もっとひどい形で来るんですよ。
政府は、関東や東南海大震災がまもなく来ると思っているから、狂ったように「防災の日」の訓練をしますが、それと同じ確率で、食糧危機は来ます。
(続く)