[社会づくり]人間環境事業の推進と援助

CMF対談




木原
元テレビアナウンサーの木村先生が、テレビ局を退職し「子供に好ましくないテレビ番組に関する調査」をテレビ局とスポンサーに送られたとお聞きしました。

マスコミの実態
木村
活動を始めて3年になりますが、最近のテレビ番組は質が下がり俗悪なものが多いと思いませんか。この調査は、「社団法人青少年育成広島県民会議」と「青少年の健全な育成を願う広島母の会」が協力して行ったものです。

木原
マスコミの影響力は大きいですから。

木村
昨年、この運動をアピールした青少年育成国民会議の席に民放連の方が来ていました。私への反論は「表現の自由の範囲内である」と。このような活動が盛り上がると「報道の自由が規制されることが怖い」と言われる。 しかし、倫理的に見ても無責任であり、品のなさ、程度の悪さは常識以下です。責任のないところに表現の自由などはないのです。それを若者が好んで見ているし、その影響は計り知れないものがあります。

木原
スポンサーは番組の内容に踏み込まないのですか?

木村
アメリカは、こういった場合スポンサーに抗議しますが、日本はテレビ局です。視聴率の高い番組のスポンサーは、自分たちの損得でしか判断せず、良識の視点から検討する姿勢は、実に心許ないものがあります。

木原
ところで、低俗番組の影響力で事件が起きても、起こったことだけに目を向けている。矛盾を感じますね。

木村
メディアは大衆のレベルを先導していきます。特にテレビは公共の電波ですから雑誌などとは違います。だから何とかしなければと!テレビ界を退職した理由の一つは、様々な運動は自由な立場で活動しないとできないと思ったからです。私は、制作現場を見てきましたが、国家や国民に貢献するという意識や使命感は希薄であるのが現実です。

いやなら見なければよいではないか。選択の自由は見る側にあるという意見もありますが、テレビ会社のトップには、自分の孫とその番組を見て欲しいと思います。祖先のことも子孫のことも考えないと、私たちは、その連続の中にありますから。見てまずい番組は作らない、それが先だと思います。また、国民全体に品の良い悪いという価値観で判断する姿勢もなくなってきています。国民をはじめ、あらゆる分野が全体的に今そういう傾向にあります。だから何でも有りの社会になっていますよ。そこに、何とか歯止めをかけなければと思っています。

木原
最近話題になった韓国のドラマの方が、精神性などがあるような気がします。また以前、銀座の活気を取り戻そうと、番組でのコメンテーターという話をいただいたのですが、その中で、お客様に感謝するとか、奉仕の気持ちで接客を、というとそれは宗教だからだめだと言われたのです。相手に対するありがとうございますの気持ちが、何故宗教なのでしょうか。当たり前のことと思うのですが・・・ 番組を作る時の基準とは何なのかと疑問になりました。


価値観の崩壊
木村
今の学校教育のカリキュラムには、人間学・人生学がない、これが大きな問題で、今の教育は教育と言えないのではないかと思います。テレビを見る側にも、そうした教育を受けたしっかりした良識や監視する機構がいると思います。ところが、平和ぼけしているというか、人生の価値観がいかに楽しく面白く生きるかにあって、そこに堕落している。

木原
私は、精神性(霊性)教育の一貫で、毎年四国遍路に百名くらいで行きます。もう16年になり、地道にさせていただいておりますが、特に、子供の変化は毎年目を見張るものがあり、帰る頃にはみんな素直になります。幼い頃にした手合わせが、いつか糧になるのではと、続けていますが、報道をして欲しいと働きかけても宗教的だとだめで、俳優さんなどがすると取材が入る。まじめにやっているところは取り上げられず、何かむなしいものを感じた時もありましたよ。今の民放を見ていると、教育性というものが欠落しているように感じるのですが如何ですか?

木村
学問の定義はよりよく生きるために道を求めること、そんな教育が小学校から始まらないといけないと思います。人間とは尊いもの・美しいものといった希望のある価値観なしで、子供の教育はあり得ないと思います。しかし、現実にはそんな教育不在の中で育った人達がテレビ界に入ってくるのですから、当然なのかもしれません。戦争時には死生観が生まれる。平和な時には何の為に生きているのかという人生観・死生観が養われないというのは皮肉なことです。ところが今の教育は、生きるための価値観を学校で教えることはまかりならん、というのです。これは崩さないといけない。

木原
活動するには、後押しも含め、精神的なもの物質的なもの両方いると思うのですが、どのようにされているのですか。

木村
今は何とか自己資金でできていますが。これからもっと大変になりますよ。権力もお金も持っている相手ですから。これまでも、全国から精神的な応援はたくさんいただきましたが、行動を具体的に起こしてもらわなければ力にはなりません。 これからは、全国の青少年育成に関わる団体に情報を発信して、立ち上がって欲しいと訴えていく予定です。このような運動は『怒り』が原動力になりますが、自分の損得に関わることは怒りになっても、時代や社会に怒りを抱ける人は沢山いるものではありません。

木原
私の場合は、運命創造学をこれまで延べ8千人くらい教えました、その生徒達が賛同してくれています。しかし、生徒は心はあっても影響力がない。影響力のある人は地位名誉があって動かない。聖職の方も含め、大きくなるのを見計らっているのではという感もあります。本当はそんな方が立ち上がっていただくと物事が早く動くと思うのですが。小異を捨てて大道につけば、大きな力になると思います。しかし、多くはお山の大将で、結集できないのが悩みです。

木村
本気かどうかの問題で、地位や名誉にこだわっている人は運動には向かないです。高杉晋作を支えた下関の豪商白石正一郎のような財界人が、今はいないように思えます。

木原
昔、経団連の会長をされた土光敏夫さんとか、財界総理と言われた石坂泰三さんのように、本当の意味での怖い存在は必要ですね。今の世の中、政界・財界を含め、全体的に見回しても、是々非々を明確に論じる人がいなくなっていますね。しかし、悲観ばかりしていても前進はしない。


拉致問題
木村
そうです。批判ではなく、そこから何を始めるかが重要です。私は拉致問題にも関わっているのですが、日本が先の大戦の反省とやらで戦うことを拒否し、遠ざけたことが拉致につながったという認識も持たなければ。また、被害者家族の皆さんがアメリカに行ってお願いしなければならないこと自体、日本の恥と思わないといけない。これを国民が恥ずかしいと思わなくなっているのです。 堕落以外の何ものでもありません。

木原
日本の恥の文化はどこに行ったのですかね。

木村
戦後、守ってもらう平和で、自分たちの力で国を守るということが分からなくなっている。ただ、私は拉致問題を通じて、国家とは何かということを考えるようになりました。残念なことに、本来政治家がしなければならなかった事を、悲しい思いをしている被害者の家族の方々がしている。


教科書問題
木原
木村先生は教科書の選定委員もされているとか。

木村
はい、びっくりしたのは、教科書を選択するさいに国論を二分してきたテーマにつながる選定の基準がないのです。いかに図解などしてわかりやすいかなどという基準で、内容ではないのです。これは由々しき問題です。ですから、子供達が自分の国を誇れるという感覚がほとんどの教科書からは生まれてきません。国の歴史を冷ややかな目で見つめる解説書ですよ。魂を込めて子や孫に語りかけるようなものが、今の教科書にはないのです。これでは真の日本人は育ちません。

以前、中国残留日本人孤児の身元引き受けをしたのですが、孤児の皆さんは自分を知るすべがない。自分の親兄弟がわからないということは、自分の正体が判らないということです。本当に残酷なことだと痛感しました。人は、自らの祖先を知ることで自分を知るのです。同じように、国の歴史を知らない限り自分がわからないということですから、歴史教育は重要です。
もう一つ差別という視点から、特定の人物を教えてはいけない、一人を英雄視してはいけないことになっています。 しかし、歴史の中で価値の高い生き方をした人や、美しく生きた人達を語る教育は絶対に必要だと思います。


教育問題
木原
日本には、戦前そのような内容の授業を「修身」で教えていました。また最近、民話や童謡など、ほのぼのとしたものはなくなってきていますね。以前、文部次官と話をした時、知識世界に生きている人は、末端のことを知らないのだと思い知らされました。

戦後、西ドイツでは日本の修身に学び道徳教育を推進して復興を果たしたそうです。イギリスのサッチャー元首相も道徳教育の強化から国を甦らせました。ロシアや中国でも国民教育に力を入れているそうです。戦前の日本型の教育は海外では役立っている。だから、もう一度日本の歴史や国体から紐解いて、教育をしていこうと。でなければこの国はだめになると思っています。

木村
現行の歴史の教え方にも、自国の歴史を否定的に捉えて、希望や明かりがないんですよ。

木原
国の舵取りをする政治家も、政党間の主導権争い・勢力争い・売名争い・利権争い・政治倫理の欠如・不正行為など、まさに「亡国」と言え、それが国民に反映しています。これは大変なことだと思うのです。

木村
このような社会風潮や政治の姿を、青少年は無意識に受け止めている。政治はこんなものだと感じています。

木原
その中で、まじめに考える若者が育つかというと、育ちません。以前スリランカを訪問した時、子供の目がみんなきれいでした。純粋なんですね。今の日本の子供は動物化しています。これは怖い。だから、本当に今の教育を何とかしなければなりません。

木村
子供のうちは現実を見せるのではなく、夢や希望を抱かせるものをたくさん見せていき、理解力のついた大人になってから現実を受け止める。先に現実を見せていくと、夢の抱きようがありません。

木原
私は広島は日本の縮図と思っています。日本の気候や地形を凝縮した象徴が広島であり、日本のキーポイントの町だと思うのです。その広島から一つの雛形をつくろうと思えばできると思います。そういった意味で、木村先生の活動にも、お手伝いはできると思います。明治維新を見ても、地方から市民から歴史は変わっています。

木村
維新の志士の生き様は凄いですね。血がたぎります。それと、裏で支えた女性の力も大きいですね。低俗番組の駆逐運動は、これからもおそらく息の永い闘いになりますし、かなりパワーもいるでしょう。良識のあるお母さん方の力もお借りしたいものです。困難を背負っても何もやらない人生よりも幸せだと思い、させていただいていきます。

木原
本日はご多忙にもかかわりませず、貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。木村先生のような方が広島にいらっしゃるとは、心強く感じました。



木村隆司 社団法人青少年育成広島県民会議理事
広島県生まれ。神戸商科大学商経学部卒業後、広島テレビ放送入社。アナウンス部、スポーツ部を経て退社。現在、株式会社ホナミ(環境事業)・株式会社ろまん(クルージング事業)経営。「男の会議」主宰・「草奔女性塾」主宰。昭和41年から少林寺拳法に入門。昭和59年に(宗)少林寺広島基町道院道院長・(財)少林寺拳法連盟広島基町支部支部長就任。昭和59年から自治体・学校・企業・宗教および各種団体などで講演を続けている。