9つの立国構想

CMF対談


  
  


政治家への道
木原
本日はお忙しいところ、ありがとうございます。早速ですが、先生が政治家を志そうとしたきっかけからお聞かせください。

松原
松下幸之助先生の様々な書物に接し、また経済のみが優先して名誉が軽んぜられているような社会を変革したいと思い、松下政経塾に入り、政治家をめざすようになったのです。

木原
順風満帆でこられたわけではないと思いますが・・・。

松原
政治家としては、都議会議員選挙も含め5勝(当選)3敗(落選)なのですが、最初は2勝1敗の後2敗で、先に負け越しましたから大変でした。しかし、苦労は大切だと思います。 松下幸之助先生は、父親が米相場で失敗し、大阪の丁稚奉公に入った。そのご苦労がなければ、日本を代表する経営者にならなかったと思っています。

木原
電力の神様と言われた松永安左エ門先生はご自身の人生経験から『3とう(倒産・投獄・闘病)』の意義を説いておられますが、最近は現場での苦労を肥やしにしようという人は、少なくなっているように感じます。 例えば、世襲制の寺の跡取りは、仕方なく学校に行っている人も多い。

松原
家業だからと安易に家を継いでいくと活力がなくなっていきます。政治家もそうです。苦労をしてないと、ダイナミズムが出ない。 特に政治家は、天国も地獄もできる限り見てきた人が良いと思います。その点、ある程度の地盤を継いだ多くの2世3世は地獄を見ていない。だから堅忍不抜になれない。

木原
世の中、理屈理論だけでは動いていない。現実の虚々実々の世界を経験してこそ胆識もでき、そういう人は魅力がありますね。 最近は、正論は言えても、その中に情けとか暖かさを感じる人は少ない。私は、先生をテレビで拝見させていただ き、とても人間的なオーラの輝きを感じました。 だからといって、2世議員でもない方が政治家をめざすとなれば、相当な志がなければ、できないと思うのですが。

松原
政経塾に入った時、松下幸之助先生が「君らより優秀な人はたくさんいるが、ここに入ったということは運がある。がんばれ」と。松下幸之助さんのこの言葉が根拠となった自信だから崩れることがない。 また、政経塾の「塾訓5誓」の中に「成功の要諦は、成功するまで続けるところにある」 つまり、成功するまで続ければ、失敗は成功するための財産になる、というのです。

木原
ヤングディアという人が、「誰でも30日は続けられる、しかし、成功者は30年続ける」と書いています。 日本の社会はめぐまれ過ぎて、忍耐とか必死でということが社会の中からなくなってきていると危惧しています。


自信のない国 日本
松原
それは、教育だけではなく生活環境にも問題があります。食事を1時間煮てつくるのではなく、3分間で食べられる。欲しいものはすべてカードで先に買える。蛇口をひねれば水が出る。 アフリカでは、水を手に入れるために2時間歩くのです。そこに忍耐力が生まれる。 便利になりすぎて、忍耐力を失った人間が忍耐力を作るには、教育・環境・国の誇りの問題は大切だと思います。

木原
確かに、何もかもがデジタルになって即物的・即効的・即興的になりすぎた感があります。それに逆行してか最近、自分の手で操作するカメラが売れているそうです。 アナログの世界は大切だということに気づき始めている人も増えつつある。

松原
適当な便利さは必要ですが、例えば、地震になると一番トイレが困るのです。原始的な方が災害など何かあった時に強い。 また、ある新聞のアンケートで、今の日本人は外国が攻めてきたら7割が逃げる、白旗をあげるで、命をかけて戦う人はほとんどいないそうです。こんな国は世界的にみて、日本だけですよ。

木原
戦争をする事ではなく、国を守るという意味ですね。

松原
はい、国のあり方と個人はよく似ています。他国に文句を言われて、謝ることしかできない国は自信のない国です。ある青年を対象にしたアンケート調査の結果、日本75%、アメリカ45%、中国・韓国15%の青年が自信がないということになった。アメリカは格差で貧困層があり、自信がないことは理解できるが、日本は豊かでありながら自信がない。 教育現場も大切だけど、今の日本外交の姿が、子供に影響を与えていると思います。

国家国旗に対して誇りと忠誠を持ち得ない人は、当然国に対しての自信がないという事で、自信のない国を守る必要はない。だから逃げようということになる。 国が自信を持てば国民は自信を持てる。自分の国や文化に対して誇りを持つことは重要です。

木原
拉致や従軍慰安婦の問題も、国民にどのようにメッセージを送るかですね。 自国に対する自虐史観があると、国民は何を座標軸にして生きていけばよいのかわからないと思います。 政治は国民の生活と直結していますから、投げっぱなしで、それで国民に誇りだけを持てと言われても難しい。


国益なき日本外交
松原
ある外務大臣に、任期中に何をしましたか? という質問をしたら、長い答弁の中で拉致や竹島・北方領土などの問題は一つも出てこなかった。日本が国益を考えない外交をしている証拠です。 特に、日本の外交は、戦争に負けて以来自信がないから自分で判断しない。 だから従来の日本が行う経済制裁も3カ国以上の共同制裁か、国連安保理決議がなければしなかった。極めて他力本願的です。 今回、改正外為法によって北朝鮮に日本だけで判断し、経済制裁したのは革命的な事なんです。

木原
なぜ日本はそんな国になったのですか?

松原
GHQが日本の精神的弱体をはかった事もありますが、戦後、昭和27~28年ごろ、大きく日本を変える最初のチャンスがありました。 何千万人の署名によって、戦犯問題にけりをつけ、憲法改正・自主憲法を作ろう、東京裁判を見直そうという風潮が盛りあがった。 それを、時の為政者が真剣に受け止めなかった。理由があったのかもしれないが、日本は経済主導で行こうと。それが、今に影響しています。 経済発展で豊かになると人間は堕落することがある。北朝鮮によって引き起こされた拉致事件で眠れぬ獅子日本は目を覚ました。この時が2度目のチャンスだったのですが、小泉首相は、拉致対策会議や経済制裁など全く行動しなかった。

木原
黒船の時もそうですが、日本は外からの働きかけで目を覚ませられる。今の北朝鮮の問題も同じですね。 ただ、横田夫妻がアメリカに行って応援を頼まざるを得ない前に、日本国の確固たる外交姿勢でやって欲しかったと思いました。

松原
アメリカの世論=世界の世論に反日的要素が増大している。 その背景に、中国の前国家主席江沢民が始めた反日政策は20~30年かけて日本をたたいていることがある。例えば、教師の教本に、日本に対する恨みを強く教育するように明記しています。生徒たちはそれを信じる。たまりませんよ。ご存じのように日本の常任理事国入りを、一番反対をしてるのは日本のODA援助の極めて多い中国ですよ。日本人はあまりにも人が良すぎる。

日本国憲法の前文に「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」つまり、日本の周りは平和の諸国民であり信頼し、命を任せる、と謳っているのですが、北朝鮮は信頼できる国家ではなかった。 憲法前文で謳っていることが間違っていることがはっきりした結果、だから憲法改正が国民の7割賛成と盛りあがったのは当たり前です。拉致は人権問題です。自国民を助けない国を他国はばかにします。アメリカだったら、特殊部隊とかを派遣しますから・・・ 自分の国は自分で守る、日本はそれができるように法律を変えないとだめですね。憲法と外交は同じようなものです。

木原
日本はなかなかはっきりしたことを言いませんね。それも一つ日本文化の良さでもありますが、その曖昧さは国際社会では通用しない。

松原
政治が悪い社会だというのは半分当たっていますよ。 原子爆弾も我々が悪くて落とされた事になっている。慰安婦問題もアメリカが日本をつつきますが、では、原爆の30万人を越える犠牲者、東京空襲の死者10万人、百万人が家を失った。これを一般庶民の虐殺と考えると、我々こそアメリカに謝罪要求を突きつけていかなければならない。 アメリカに対しても、言うことは言っていかないといけない。外交が毅然とすることによって誇れる日本が生まれる。誇れる日本でなければ文化の発信もできない。だから日本の誇りを取り戻さないといけないと思います。


日本文化は世界の起爆力
木原
今、日本文化は世界に模倣されていますね。

松原
内容から言えば、日本文化は世界最高水準ですから。 ただ残念なことに、日本の学校では日本の良さを十分に教えていません。 日本文化のアニミズムの発想は大切です。西洋は神様が人間をつくったとして人間は他のすべてを支配してもよいとなっている。これに対して日本人はすべてが神であり、地球や生命との共生を考えます。鉄腕アトムのように、機械にも人間性を感じる。物に対する愛着が針供養や人形供養であり、社会全体で習慣化しているのは日本です。 これは世界の環境問題を考える時にも重要です。

このような考え方は、全世界にもともとあったのですが、一神教の猛威の前に全部壊されてしまい、たまたま日本にだけ、原始宗教を包含した世界普遍のアニミズムが残った。 その意味で、神社神道は世界に通用できる起爆力がある。だから、世界に通用するように神社界も理論化しないといけない。

木原
ペトログラフの研究では、日本には世界中のすべての雛形があると判っているそうです。 まさに、日本文明・文化は世界に誇れるものであり、私は宇宙森羅万象の普遍性そのものを内包していると思います。それを先日出版した『誇れる国づくり・魅力ある人づくり』にまとめたつもりです。 最後に、先生の政治信条を聞かせてください。


経済優先から精神優先へ
中村先生と松原先生
松原
人間は誇りがなければやっていけないように、国家も誇りがないといけない。 エドモンド・バーグという人が、『政治は現在の我々と過去の我々の祖先と、未来の子孫が作る共同作業だ』と言っています。このことが解れば、簡単に自虐的なことは言えません。 連綿としたプライドを持つ政治を実現しないといけない。 

その為に、憲法も教育のあり方も外交も、変えなければと考えます。
特に、大戦の時に亡くなった10代20代の若い人達を考えたら、神社神道を始め世界に誇れる日本文化を、もう一度 きちんとすることが、結果として先人・先祖に報いることになる。 今、経済優先から精神的な誇りにシフトしないといけない。それはお金には換算できない位、価値あることですよ。 精神が目覚めた時、経済は必ずついてくる。それが真実です。

木原
心は形をつくりますから。もう一世代、あと30年このままにしていたら、日本は国名は残っても国体は消えてしまいますよ。

松原
その通りです。今がぎりぎりのところです。

木原
先生の持っておられるオーラパワーをこれからも存分に発揮していただきたいです。期待しております。 本日は、本当にありがとうございました。


松原仁先生プロフィール
1956年生まれ。早稲田大学卒業後、松下政経塾へ(2期生)。 「国家百年の計は教育にあり」という信念から教育問題、また「日本の繁栄は中小企業にあり」との視点より、中小企業問題を中心に扱う。 都議2期。現在衆議院議員3期目。北朝鮮に拉致された日本人を早期に救出するために行動する議員連盟(拉致議連)事務局長代理を務めるなど拉致問題解決に力を尽くしている。また、中国の歴史教育における学習指導要領(2001年度版)を入手し、中国で行われている反日教育の実態を追極した。 ラジオ番組「松原仁のジンじん仁」(ラジオ日本)をもつ。