9つの立国構想

CMF対談

魅力ある新しい「国づくり・人づくり」には何が必要か?


憲法改正について
木原 平沼先生は昭和51年に立候補されて以来、一環として『自主憲法制定』を公約に掲げてこられ、 国会で憲法調査会が設置されたわけですが、この憲法改正についてご意見をお願いします。
平沼 私は小さい頃から政治家を志していましたが、政治家になる以上、 国の基本である憲法は、このままではいけないと一貫して公的に掲げてきました。 そのせいかもしれませんが、初めて立候補した時から二期連続して落選しました。 その間、故中川一郎先生が応援してくださることになったのですが、 それはパンフレットに「自主憲法制定を期す」と書いていたからです。

三回目の選挙のとき、岡山まで中川先生が応援に来てくださったのですが、 私が憲法の話ばかりするものですから、さすがの先生も
「憲法の話ばかりするな」
と言われたのを覚えています。(笑)
木原 よくわかります。 私もそうなのですが、筋を通して真面目に本当の事を言っているのですが、 なかなかわかってもらえない、又そういう所には人が集まりにくいようですね。
平沼 そう言っていただけると有難いですね。 私の基本的な考え方は、日本は聖徳太子の17条の憲法・大宝律令をはじめ、 1500年近く続く法治国家であり、その歴史の上に立って、 国の最高法規としての憲法を定めなければいけない、という事です。 どの国の憲法でも、その前文で歴史、文化に言及しています。   ところが、ご承知のとおり日本国憲法は日本人が作った憲法ではありません。 マッカーサーがケーディス大佐に、「草案を1週間で作れ」と命令されたのであります。

憲法とは、国の基本法であり、その基本法が意図的に、 ある目的である国に押し付けられたということは遺憾なことであります。 また、自由民主党が出来たいきさつも、昭和30年に自由党と民主党が大同団結して、 保守合同で自由民主党が出来たわけです。 それは戦後の保守政党の悲願として、自主憲法を作ろうと、 そのため国会で2/3を制するために保守合同したわけです。

初代鳩山一郎総裁は、憲法改正を掲げましたが、当時は戦後10年しか経っておらず、 皆がこぞって反戦運動を煽り立て、1回目の選挙で負けました。 その後に岸信介総裁も意欲を持っておりましたが、 60年の安保大改定があり、憲法改定をおいてでも、安保改定をやったわけです。 これも日本中を巻き込む騒動となり、その経過を経て、 それ以来自民党は経済政策を最優先とし、憲法をタブー視してきたのです。
木原 終戦から60年経った今日でも、占領政策を円滑にすすめる為に押し付けられた憲法であることは、 自然ではありません。 日本の国体が持っている使命とか、神話の意味だとか、日本人が日本の精神にのっとって、 型枠と言いましょうか、土台を再検討すべき時期にさしかかっていると思います。

昨今、家族や家系、学校や会社など、どの分野を見ても、 『訓』というか、『法』というか、 人間が生きていく上で大切な枠組みがなくなってしまい、 箍がはずれたような状態にあるのは、 国の根幹を左右する憲法からの建て直しが必要だという事なのではないでしょうか。
平沼 今後は議論を重ね、慎重に吟味しながらの改憲が必要と考えております。 その中でも9条が問題です。

今まで、解釈で乗り切ってきた訳ですが、 集団的自衛権の問題にせよ、憲法に自衛権の存在を明記し、 国連の平和維持活動にも自衛隊が大手を振って参加できるよう、 誰が読んでも分かるように改正しなければ、検討すべき課題は多いと思います。
木原 私は、特に1条と9条は大事だと思っています。 今の憲法改正議論の中で、第1条の天皇条項が、第2条にまわされるような懸念のある報道を見た時は、 私も非常に不安に感じました。 結局は元の鞘に収まったようですが。 それと、天皇を象徴としている点も議論する必要があると思います。 諸外国は、天皇を元首の位置づけと見ていると思うのですが。 この点についても明確にする必要があると思います。

又、9条に関しましても、
  • 日本国民は、正義と秩序を基調とする平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を決する手段としては、永久にこれを放棄する。
  • 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

今の内容は尊重しつつ、平沼先生も仰られている自衛権を明確にすべきだと思います。 非常に難しい条項だけに、慎重に議論すべきだし、 日本のような小さな国は、核弾頭1発でふっ飛ぶような狭い国土ですから、 戦争する為の軍備拡張を助長するようなものであってはならないと思うのです。 むしろ常日頃から、日本が世界に安全と安心を与え、 世界平和の推進役として中心的に貢献する活動を充実させるべきだとも思っています。 その重要なお役目を天皇にぜひとも担っていただきたい。 もっとも、これは私の私見でございますが。
人権擁護法案について
平沼 又、私が危惧しているものの一つが、『人権擁護法案』です。 この法案は、自民党の一部議員や公明党が強力に推進していますが、 極めて問題があると考えています。 この法案では人権擁護委員に令状なしでの立ち入り捜索や、 押収などの強力な調査権を与えており、 委員への「国籍条項」を設けることも拒否しています。 又「人権侵害」の定着が曖昧なため、拡大解釈が可能で歯止めがないのです。
木原 私も『現代社会が持つ12の不安(『誇れる国づくり魅力ある人づくり』P36~43 参照)』を16年前に書いているのですが、 その中に「司法警察制度の不安」を述べています。 共謀罪の行方も気になっており、ある意味、昔の「特高警察」のような懸念がありますね。 人権や擁護という言葉で、その法案を受け止めては大変なことになると思います。
平沼 ましてや強力なメディア規制法の性格も備えており 「人権特高警察設置法」「言論統制法」とも言うべき、 国民生活や言論、表現の自由に根底から影響を与えかねない危険性を持っています。 何としてでも、国民世論を喚起し、法案の持つ問題点・危険性をアピールしたいと考えております。
教育基本法改正案について
木原 憲法改正法と表裏一体である「教育基本法」についてお伺いしたいのですが、 先程からお話をしているように、 この国をなんとかしなければならないと思っている一町位の私共では、 非常にこの教育基本法には関心がございます。 国を動かすのは人であり、その基礎は教育であると痛感しております。

今年の4月28日、教育基本法改正案が閣議決定され、国会に提出されました。 しかし一部で、改正そのものを反対する運動が出ております。 近年子供のモラル・学ぶ意欲の低下・家庭や 地域の教育力の低下・ひいては若者の雇用問題も深刻化している中から、 改正案の中身については、これからまだまだ検討せざるを得ないでしょうが、 改正することそのものを否定とするならば、これは問題になると思われるのですが。
平沼 対談風景「教育基本法」は占領政策を円滑に運ぶために「日本国憲法」と 表裏一体で昭和22年に作られたもので、 これも『目的的に押し付けられたもの』と解釈しております。 読まれたことがあるかと思いますが、悪いと思われることは、表面的には何も書かれていない。 眼光紙背に徹する熟読玩味致しますと、日本の歴史だとか、守るべき伝統だとか、 あるいは家族の絆でありますとか、祖先を大切にする、こういうところが全部欠落しているのです。
何が強調さえているかと云いますと、個人の尊厳であります。個人の尊厳という価値観は大切ですが、これを教育基本法で強調しますと、行き過ぎが起こってくる。
例えば、教職員の組合による教育基本法に忠実な結果、子供達は個性・特性といろいろな分野を持っているのですが、個人の尊厳を強調するあまり、間違った平等意識が全面に出てしまっているのです。
運動会の徒競走にしても、スタートは皆でしますが、ゴール近くの線の前でトップ走者は足踏みをし、全員が追いつき揃ってゴールをするとかですね、個性・特性をいかに伸ばしていくかが大事であって、優越の差別はいけませんが、当たり前の伸ばすものは伸ばし、前向きな意欲を持たせてやらねば。
また日本の皇室の祖先が祀られている伊勢神宮は、かつて年間90万人の参拝者が、今では2万人に激減しているのです。修学旅行のコースもこういった歴史のスポットからはずれ、日本の歴史の探訪はおろか、今や海外に行って、南京大虐殺を見せられて帰って来ている。是々非々の判断がつかない教育ではどうしようもありません。考えられないような現状です。
木原 そこまで極端な現状は一部といえども、日本人そのものが駄目になってくる感がありますね。
平沼 そうなんです。また日本の神話からの長い長い歴史のことなどは、あまり教えていない。私は神話のある国は尊い国だと思っています。アメリカにはこういった歴史がない。
日本には、神代の時代という神話があって、興味深くロマンがあって、というものが民族の根源にあるということを大切にし、そこから今の自分達がずっと繋がっている。憲法と同じ次元で成立した教育基本法は、しっかりと見直していかないといけない。
木原 平沼先生が仰られるとおり、私も同感です。
神話のない国は滅亡してしまうと言われています。日本の古い脈々と受け継がれてきた歴史・伝統・文化を教えていかなければですね。
一番大事な道徳、昔で云うなら四書五経、修身という人間を完成させうる教えがしっかりしていた。又、お寺が学校の役割をしていました。
こういったことを危惧して、私は『魂の領域から人間を立て直す教育の場』として、総合人間教育学の普及と援助を立ち上げたのです。そこには、宗教性はありますが、どこまでも人間の魂の奥にある霊性(SQ)を向上させ、真の人間に目覚めて、更には、地球規模を超えた宇宙本位=コスミカリズムから、全ての物事に対応できる『人づくり』をやっている所以です。
平沼 それは大変な信念と努力がおいりだったことでしょう。今から二年以上前に、中央教育審議会(中教審)で、改めるべきだという答申が出ていて、この件について自民党と公明党が残念なことに、一致点がとれていないのです。
『愛国心』の問題で相容れが出来ていない。抵抗があるということは事実だと思います。 しかし戦後日本は一度も戦争に巻き込まれなかったし、日本は平和を享受できました。
ですから『愛国心』という言葉が教育基本法に書かれたからといって、それで日本が軍国化するという考え方は、少し飛躍しているのではないだろうかと思います。
もっと素朴純粋な形でこの国を愛するとか、それが変な悪平等でなく、いい意味での個性の発揮が、これからの教育には必要だということです。
木原 私も今一番力を入れなければならないのは教育と考えております。CMF地球運動の「人づくり」構想の中心学である『CMF運命創造学』は学術的に科学的に、総合人間教育を、社会人を中心に教育しているのですが、 『親が変われば子供が変わる』不思議な事に、受講された方の子供まで変化していくのです。まさに霊性は繋がっていると見せられるのです。
その現象のひとつに、毎年5月のゴールデンウィークに四国八十八ヶ所霊場の一国巡りを16年続けているのですが、毎年総勢100名ほど大型バス3台で、幼児から80歳まで、平均年齢30代という四国参拝団体の中では、若い団体と驚かれるのです。
ただお寺をまわって、お経をあげるだけなのですが、最終日の4日目には、子供の表情が生き生きと変わるのです。聖地に触れ、仏様のような心になっていくと、人間甦っていくのです。子供達は、来年もお四国に行きたいと、翌年も子供に導かれて参加するような現象なのです。
話はそれましたが、宗教活動をせよと云う事ではなく、私は宇宙の仕組みを示す教えが、宗教の本質だと思っております。神仏とは自然の摂理そのものであると。ここを間違ってはいけないと思っています。
平沼 すばらしいことですね。精神の涵養をしていかなければと思っていますし、これからは、どんどん目覚めた人達が増えて来る予感が致します。 私も国の将来に向かって、これからも理想の教育基本法改正を提言していくつもりです。
経済について
木原 最後に、CMF地球運動でも関心の深い、経済についてお伺いしたいのですが。
平沼 私は森内閣の時、最後の通産大臣をさせて頂き、小泉内閣で初代・2代・3代の経済産業大臣として、 併せて3年2ヶ月、経済閣僚をさせていただきました。 経済の流れを紐解くと、バブルの問題が絡んで参ります。
1970~80年代にかけて、日本は『ひとり勝ち』の状況で、 ご存知のように世界では「ジャパンアズナンバーワン」と言われていました。 その当時、アメリカは双子の赤字を抱え、大変厳しい時代でした。
日本は大変な富が蓄積していたのですけれども、ある噂が流れて来た。「東京が世界の一大金融センターになる」と。 その当時日本人が皆そうなると思っていた頃で、不動産や証券会社などが、どんどんと勢いを増してきました。
そこで貯まりに貯まった富が、まず土地に向かって流れ出し、銀座4丁目の時計台がある辺りは、 一坪が10億円という値段がつけられる程、日本中が高騰。 銀行も土地を買えと一種のバブル景気につられて、 株価も1万2千円から3万8千円に届く高騰ぶり。 有名なゴッホの絵、ルノワールの絵をせり落とす日本人。 ハワイのワイキキビーチのホテルを日本企業が買収。 また三菱地所がアメリカのロックフェラーセンターを買収。
「戦いすんで日は暮れて」ではありませんが、萎んでしまったら、日本は1200兆円のお金が失われているとの統計が出ました。その後、ワイキキビーチのホテルは買い戻され、ロックフェラーセンターもこれまた買い叩かれて、安値で買い戻されてしまっていました。
木原 あの頃は、何もかも狂っていたようでした。
私はよく門下生には、この兆候はひとつの大きな国際金融組織が動いていて、 その戦略の中で踊らされているだけなのだと。 そしてあと10年もすれば、大企業や銀行、病院などが潰れる時代がくる、 また貧富の差が激しくなる格差社会が来ると。
これは世界的な流れを実直に見ておりますと掴めるものであり、 別な能力で多少感ずるものもあるものですから、弱者は結束して、新しい枠組みを作るしかないと。
それが、現在の誇れる国づくり魅力ある人づくりのためのCMF地球運動となったのです。
平沼 対談風景私もバブルの教訓をどのように生かすべきか、いろいろ考えました。
日本人の特質を考えますと、物づくりに長けている国であり、民族であります。
従って戦勝国に追いつけ追い越せという意欲の中で、 日本というものは物づくりで新たな侃々諤々議論をさせて頂き、 4つの柱を建てました。

  • IT情報通信:無限の可能性を秘めており集中的に伸ばしていく分野。
  • バイオテクノロジー:医療・医薬の分野だけでなく、農業とかあらゆる分野で関連する。人ゲノムの解析・稲ゲノムの解析は、今現在世界一進んでいる。
  • ナノテクノロジー:ナノとは、10億分の1の単位で目に見えない世界。このナノテクノロジーと材料を結び付けていく。ナノ技術を使って小さな物体を作り、医療分野等で更なる発展が望める。
  • 環境とエネルギー:フロンガス、オゾン層などの問題を考え、環境とエネルギーを結びつけたものを考案。水素燃料電池などを含む新しいエネルギー源を開発し、環境を考える。
  •  

これからの日本を目指す産業競争力の中心に、国の政策として据えることが出来、この分野を更に伸ばしたいと考えています。
木原 日本人は物づくりに関しては、非常に長けていると平沼先生が仰いましたが、 まさに世界に類を見ない民族であります。
それを私は、日本的宇宙観(著書:『誇れる国づくり魅力ある人づくり』P54 参照)にまとめているのですが、 例えば茶碗一つにしても、陶土とか薬品とかの物質的材料と、 人の心の中に描かれた図案や労力等の、心的な力とが合一して初めて茶碗が出来上がる。 その一つですら、物のいのちと心のいのちとが合体されているのです。
そのように大自然のあらゆる現象や品物すら、物心不二(物と心が区別できずに溶け合っている)の生命的なものの顕現だと。宇宙の生命の全てが、お互いを生かし合いながら、全体を生かしている。
このような大宇宙生命の働きそのものを捉えて生きようとするのが、日本的宇宙観なのです。日本の物づくりは、その根底に精神づくりが出来ていた、つまり精神が物づくりを世界一にしたと思っています。
21世紀への選択は、『物質(経済)か生命(霊性)か』であり、変革の運動は、暴力革命を前提としないものでなければならないし、又、この変革運動は、世のリーダー達の一種の悟りとして意識改革によって、 そこから政治の流れも社会のあり方も、人間の幸せの中身も変えていく、大きな運動に成長させねばならないと思って、日々東奔西走しております。
長時間に亘って『国づくり人づくり』についてお伺いさせて頂きました。平沼先生の日本国を思う熱き心が、ひしひしと伝わって参りました。
私も、世界平和のシンボル都市広島から微力ではありますが、 今日まで『国づくり人づくり』を叫んできたことは無駄ではなかったと、 感慨を覚えた次第であります。 又、お時間のある時、いま国会でも議題になりつつある『格差社会』の事についても お話をお聞かせいただきたく思います。
本日は本当に有難うございました。お身体ご自愛の上、ご活躍をお祈り致します。