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9つの立国構想

CMF対談


   夢対談 時代の曲がり角

政治家を目指した原点は「恩返し」
木原
本日は大変ご多忙のなか、ありがとうございます。
早速ですが、まずは下村大臣の政治家としての原点を教えてください。

下村
小学校5年生の頃、学校の先生から「博ちゃんは、将来文部大臣になるかもしれないね」と言っていただいたことがありました。これは私にとって「心の財産」になり励みにもなりました。
下村博文
小3の時に、父親を交通事故で亡くし、母は生活保護を断り私達兄弟3人を必至で育ててくれました。高校は交通遺児育英会と日本育英会(現日本学生支援機構)の特別奨学金(現在は無い)の両方で進学できました。

私達家族に手をさしのべてくれた人達に恩返しがしたい。だから政治家になりたいと。
また、学生の時に行った育英会の街頭募金で、私自身が当事者であるため、この辛い経験が社会的憤りの原点となって、積極的な政治活動への転機となりました。 


教育再生に求められる霊性教育
木原
都議会議員を35歳で初当選し2期務められた後、衆議院議員を6期され、この度文部科学大臣と同時に教育再生担当にも就任されて、今30項目もの改革に着手しておられるそうですね。

下村
文部科学大臣に教育再生担当の名前が付いたのは初めてですから、平成25年は教育再生元年だったと後々評価される様に、本質的な教育再生を行いたいです。

40年前よりも今は格差は広がっています。どんな子供でも日本人に生まれて良かった、自分は世の中の役に立つ人間だと素直に思える人生を送って欲しいのです。

その取り組みの一つが、日本の子供の自己肯定感の回復です。

今の高校生は何と8割が「自分は駄目な人間だ」「時々そう思うことがある」のどちらかに該当すると言っています。

仕事も勉強もしていない30歳までのニート・フリーターも160万人以上。このような社会に、未来がある筈がありませんし、これは世界先進国共通の教育問題です。

学校教育だけでなく、木原理事長の言われる霊性教育、つまり人間性・感性・人間のノウハウを高めていく教育が求められています。

木原
私は1985年に不思議なご縁で僧侶になりましたが、現代人は心よりももっと深い、魂が傷ついているため、宗教的な範囲を超えて、人間の本質・霊性に踏み込んだ教育の必要を感じています。

グローバリズムの中で、自分さえ良ければという個人主義的な考え方が非常に増えています。

下村
世界に通用し活躍できる本当のグローバル人材、真の国際人になるには、真の日本人としてのアイデンティティをきちんと持っていなければ通用しません。外国語がしゃべれてもダメなのです。

日本人のアイデンティティとは、日本の伝統や文化、歴史を良く分かっていて、海外の人達に対しても、それを語れるという事です。

木原
海外で日本文化を答えられなかった失敗談はよく聞きます。外国の方は、自国の文化や伝統には誇りを持っていますから。

日本史を教えなくなったり、英語教育に力を入れていますが、その前にもっと大切な事があると。

下村
そうです。例えば海外では必ず宗教が話題になります。日本人の宗教感は一神教徒とは違うので、多くの日本人は無神教だと思っていますが、実は違います。

あしなが育英会の副会長として3・11の恩返しで宮城の中学生・高校生15人位とフランスに行った時も、フランスの学生から日本人の宗教観を聞かれ、ある高校生が「無信教です」と言いました。

後でみんなに聞いてみると、お正月には初詣、お盆にはお墓まいりに行く。クリスチャンでは無いが、クリスマスにはパーティもする。もし本当に無信教だったら「何もしないか否定するのではないか」と問いかけると、高校生たちが「そうだなあ」と言うのです。

日本人の宗教心は、それら全てを包み込んだ偉大なる存在(=神仏=グレートサムシングなど)、目に見えない世界をどこか信じているから無信教ではない。その上で、人間と動物の違いは、宗教心を持っているかいないかで、ヨーロッパで無信教と言ったら人間ではないという評価になるから、誤解を与えるのだと説明しました。

今までの教育の問題もありますが、子供達にも日本の宗教観を、きちんと教えて自信を持って語れる教育の必要性を痛感しました。


日本人の宗教観は今世紀の世界共通理念
木原
私は宗教ではなく「宗教性」と言うのですが、私の世代は仏壇や神棚を祭ることは日常生活で、それを宗教と思いませんでした。今の子供世代は、宗教とは何かも知らずに毛嫌いします。

サミュエル・ハンチントン氏(米国際政治学者/ハーバード大学教授)は、日本文明は世界8大文明の一つで、世界でも特異な文化圏と言っていますが、そういう違いも知らない人が多く、これでは日本を誇れるはずがありません。

私は日本の文明・文化の根源を研究しておりまして、遡ると縄文時代から、精霊崇拝、自然崇拝、祖先崇拝の3つが融和(むすひ)されており、これは宇宙リズム、自然のリズムそのものです。

さらに古神道、仏教、儒教が聖徳太子によってうまく融合されて天皇を中心とした千年の国の礎ができあがっているのです。
夢対談 時代の曲がり角
これが日本人のアイデンティティーであり、霊性であると。だからこそ、日本人の礼節や物づくりの心、そして戦後のように復活する底力からがあると。私はそれを祀祭政一致と表します。

祀…生命を共尊する
祭…自然と共生する
政…社会を共育する


この日本的霊性をカリキュラム化した「運命創造学」を、28年前から教えていますが、鬱病などの方が現場復帰するのです。

これからの教育は、欧米的な見えるものだけの価値判断ではなく、日本古来の見えるものと見えないものをうまく融合させたものでなければならないと考えております。

下村
それは是非、どんどん発信してもらいたいと思います。

日本の古来からの古神道は共産主義的に原始宗教と言われていますが、地球そのものも生命体と捉えるように、地球に存在している全ての神仏を命だと考える一神教を超えた日本人的な宗教観を、21世紀の共生社会、また世界の共通理念にしていかなければ、人類に未来は無いのではないでしょうか。

木原
同感です。よく「真善美」と言いますが、日本文明は真善美に「聖(生)」があります。

下村
日本は、自分達の正義が正しいから相手を倒すという西洋的・植民地主義的な「支配」の考え方ではなく、「共生」という相手の違いは違いとして認め合いながら生かし合うという考え方です。

弘法大師空海は、それを「山川草木悉皆成仏」と表し、古神道の「全てに命、生命が宿っている」ことを仏教の中に入れたのです。

それこそ日本の精神であり、この思想や哲学をしっかり自覚して世界に発信すべきです。日本はそういう使命がある国で、日本人は自信を持つべきです。


国境も歴史も超えた人間学が必要
木原
日本には世界平和や持続可能な繁栄のための智慧があります。しかし美徳とされた利他や、世の為、公、孝などの日本的精神や日本人の霊性は今壊れつつあります。

今最優先されている経済だけでが幸せではなく、「8つの生活づくり」として、経済・文化・精神・家族・仕事・社会・家庭・菩提。

また、人間性を徳性・品性・仏性・感性・霊性・知性・情性・理性の「8つの生命づくり」として、この16のバランスが取ることが、長続きする人間のしあわせだと教えていますが、今これらのバランスも取れなくなっています。
夢対談 時代の曲がり角
下村
教育再生実行会議で道徳の教科化を提言され、そこに力を入れて行きたいのですが、もっと本質的に言えば「人間学」が必要ではないでしょうか。

感謝や思いやりや自立など、幸せとは何か、人として幸せに生きるとはどういう事なのかという人間学には、国境を越え歴史を超えた法則性があります。それが分からないということは、暗闇の中を明かりを持たないで歩いているようなものです。

理事長の本(『縁因果の法則で運命は決まる』)でも言われていると思いますが、それを是非私は伝えたいし、学校の中でも教えていけばいいし、運命も私は「運命学」であると思います。

木原
大臣にそのように言っていただけるのは嬉しいです。運命創造学は、古来より大切にしてきた日本人の生き方、修身教育とも言える人間学だと自負しております。

日本人が縄文時代から引き継いできた遺伝子には、日本的霊性が連綿とあると確信していますが、それを覚醒させるには現実のギャップは大きく、時代に逆行しているのではと悩みました。

下村
私は「運が良い」と言われますが、それはその方法を他の人よりは知っているからだと思います。

その法則性を広く多くの人達が学べば、運命は相当違って来るし、一人ひとりの運命が良くなれば日本国の運命も良くなって来ます。

やりがいや生きがい、目標を持って頑張れるという事は、明確な目標を打ち出せるかどうかです。散歩して気が付くと、富士山の頂上に登っていたという事は有り得ません。富士山に登ろうという目標があり、努力して登るから頂上まで行けるし、登って初めて分かる風景があります。運命も同じです。

「意志あるところに必ず道あり」です。だからこそ人生は素晴らしい。頑張れば誰でも報われる社会になれば、目標を持って生きていけるでしょう。

だから是非、木原理事長には頑張っていただきたい。

木原
心強いお言葉を頂きまして元気と勇気を頂きました。

私が財団を作った目的は、日本の文明・文化をもう1回見直し、そこから土壌である人間教育をしたうえで、あらゆる事業を9つの事業構想として展開しようというもので、日本全国飛び回って一生懸命しておりましたが、これまで教えてきたことは間違ってなかったと自信になりました。

本当にありがとうございました。


文部科学大臣 下村博文